【眼科4】網膜中心静脈閉塞症 〜火炎状眼底、新生血管、ルベオーシス〜【107D25、105E54】

※全18回です。目次はこちらです。

コウメイ:今回は網膜中心静脈閉塞症(網膜静脈分枝閉塞症)について説明していきます。網膜中心静脈閉塞症=火炎状眼底とだけ覚えている方はいませんか?もう少し深く勉強していきましょう。

目次

1)火炎状眼底の眼底写真

まずは火炎状眼底の実物を見てみましょう。文字だけでなく実物を確認することが大切です。

医師国家試験107D25_画像_火炎状眼底の眼底写真
画像:医師国家試験107D25

次になぜこのようになるか考えましょう。まず、血栓などが原因で網膜中心静脈が閉塞します。中心静脈とは網膜の細い血管が集まった太い血管のことです。この静脈が閉塞するとそれより細い静脈に血液がたまりパンパンになり、圧力が高くなります。静脈の壁は薄いので圧力に耐えることができなくなり破裂します。破裂すると出血が網膜全体に広がり火炎状眼底となります。

以上が火炎状眼底が起こる理由です。ここまでは比較的理解しやすいかと思います。しかし、次からがちょっと難しいです。まずは過去問を見てみましょう。

医師国家試験107D25

68歳の女性。1週前からの右眼の視力低下を主訴に来院した。10年前から高血圧症で内服中である。前眼部に異常を認めない。視力は右0.1(矯正不能)、左1.5(矯正不能)。眼圧は右15mmHg、左14mmHg。右眼の眼底写真を別に示す。蛍光眼底造影では広範な血管閉塞を示す虚血の所見を認める。左眼の眼底には異常を認めない。

医師国家試験107D25_画像_火炎状眼底の眼底写真

今後起こりうる合併症はどれか。

a 兎眼
b 涙腺炎
c 眼瞼炎
d 角膜炎
e 血管新生緑内障

2)虹彩ルベオーシスと同じ

正解はeの血管新生緑内障虹彩ルベオーシスによる緑内障と同じものです。

※虹彩ルベオーシスといえば前回の記事で勉強しましたね。まだ読んでいない方は一度読んでからここに戻ってくることをお勧めします。

なぜ網膜中心静脈閉塞症で虹彩ルベオーシスが出てくるのでしょうか?実はこの方は糖尿病網膜症(その中でも増殖糖尿病網膜症)なのでしょうか?

この眼底写真は網膜出血であり、増殖糖尿病網膜症で見られる硝子体出血ではありません。ですので、確かに網膜中心静脈閉塞症です。それなのに、なぜ網膜中心静脈閉塞症で虹彩ルベオーシスが見られるか説明していきます。

まず、網膜の静脈が閉塞し、静脈の流れが悪くなります。その影響で毛細血管の流れも悪くなり、周囲の組織に十分な水分や栄養、酸素を届けることができなくなります。

つまり、無灌流域が存在することになります。無灌流域からVEGFが分泌され、硝子体、房水を通じて虹彩に辿り着き、虹彩血管が生じます。その結果、緑内障となってしまいます。

虹彩ルベオーシスについてより理解が深まったところで過去問を見てみましょう。

医師国家試験105E54

63歳の女性。左眼の視力低下を主訴に来院した。2か月前から眼痛があった。視力は右1.0(矯正不能)、左0.2(矯正不能)。眼圧は右16mmHg、左38mmHg。左眼の充血を認める。左眼に隅角の新生血管と著明な虹彩ルベオーシスとを認める。

左眼の眼圧上昇の原因となり得るのはどれか。

a 翼状片
b 視神経炎
c 動眼神経麻痺
d 網膜中心静脈閉塞症
e 角膜ジストロフィー

この方は新生血管と虹彩ルベオーシスが存在するのでVEGFが分泌される病気であることが分かります。つまり、dの網膜中心静脈閉塞症が正解となります。選択肢にはありませんが、増殖糖尿病網膜症の可能性もあります。

※網膜中心脈閉塞症では自然に血管が再開通するので、無灌流状態は長く続かず、新生血管は生えません。ここ間違えやすいので注意してください。

以上、網膜中心静脈閉塞症について勉強してきました。大分深く理解することができたのではないでしょうか。

次回は網膜中心動脈閉塞症について解説していきます。

目次