コウメイ(@kokusigokaku):今回は輸液の勉強をしていきましょう。まずはこちらの過去問をご覧ください。
5%ブドウ糖液の輸液が適切となる病態はどれか?
- 尿崩症
- 低張性脱水
- 等張性脱水
- 急性副腎不全
- ADH分泌不適合症候群<SIADH>
答え(クリック)
a
「脱水があったら点滴すればいいんじゃない?」と単純に考えるとbかcが正解になりますが間違いです。
5%ブドウ糖液の使い方
まずは5%ブドウ糖液の使い方を理解しましょう。主に2つあります。1つはエネルギー源としてや低血糖の場合のブドウ糖の補充です。これは単純なので問題ないでしょう。
もう一つの使い方は自由水の補充です。自由水が分かりにくかったら真水と考えてもらって大丈夫です。なぜブドウ糖液が真水になるのでしょうか?
5%ブドウ糖液は点滴した直後は5%ブドウ糖です。しかし、ブドウ糖が入っているといってもわずか5%なので、すぐに利用されなくなってしまいます。その結果、最終的に真水になります。真水なので点滴すると血液が薄くなります。ですので、血液が濃い(Naが高い)ときに使います。
細胞外液の使い方
今度は細胞外液を考えてみましょう。細胞外液とはNa濃度が約140mmol/Lの点滴のことです。Naは水を血管内に留めておく作用があるので、主に血管内脱水のときに使用します。
ちなみに、点滴のバッグに細胞外液とそのまま書いてあるものはありません。
- 生理食塩水
- ソルアセトF
- ヴィーンF
- ラクテック
- フィジオ140
などが細胞外液です。
以上を理解した上で、選択肢を見ていきましょう。
各疾患で5%ブドウ糖と細胞外液のどちらを使用すべきか
尿崩症
尿崩症ではADHの分泌が低下するため、薄い尿が大量に出ます。その結果、血液は濃く(高Na)なります。よって、血液を薄くする5%ブドウ糖液を点滴します。
低張性脱水
低張性脱水とは血液が薄い(低Na)脱水ことでありこれ以上薄くしてはいけません。5%ブドウ糖液を点滴してはいけません。細胞外液(必要に応じて細胞外液より濃いもの)を点滴します。
等張性脱水
等張性とは血液が濃くも薄くもなっていないということです。この場合、細胞外脱水も細胞内脱水も考えられますが、まずは細胞外脱水の治療を優先し細胞外液が選択されます。
急性副腎不全
急性副腎不全では電解質コルチコイドが低下するためNaが低下します。その結果、血液量も少なくなります。よって、細胞外液が選択されます。
ADH分泌不適合症候群<SIADH>
SIADHはADHが必要以上に分泌され、水の再吸収が多くなってしまう病気です。その結果、血液は薄く(低Na)なります。ですので、細胞外液の点滴が必要・・と考えがちですが、SIADHでは血液の量は減っていません。むしろ増えています。
そこに点滴をしたら血液量がさらに増えてしまい、うっ血性心不全や肺水腫を引き起こす可能性があります。よって、点滴をするのではなく水制限を行います。
以上で解説は終わりですが、さらに深く勉強したい方は拙書「輸液」のキホンがお勧めです。看護師さん向けの本ではありますが、医大生にも十分に役に立ちます。
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