最終確認日:2017/07/25 最終更新日:2017/07/25
コウメイ:虚血性心筋症について質問をいただいたので回答します。まずは質問を見てみましょう。
いつも明快なご解説、ありがとうございます。勉強を進める上で大変助かっています。医師国家試験107I7で質問があります。

正解:a
質問者:なぜd安静時心筋血流SPECTよりもa冠動脈造影が鑑別に有用かわかりません。多くの場合、狭心症の病態には冠動脈狭窄、冠攣縮、(CAGでは評価できないような)coronary microvascularの障害の3つの因子が関与しており、しかも一人の患者において3つの因子のうちいくつかが重複して作用していることが多いと大学で教わりました。
そのためCAGで冠動脈狭窄が見られなくても狭心症を否定できないし、逆にCAGで冠動脈狭窄が見られたからといって他の2つの病態を否定できるわけでもないとのことでした。
そう考えると心筋虚血の有無を鑑別するにはa冠動脈造影よりもd心筋血流SPECTの方が、虚血を直接評価できるため、確実なのではと思いました。たとえば、狭心症には上記の3つの因子が関与しているけれども虚血性心筋症の原因として冠攣縮とcoronary microvascular disordersは確認されていない、という背景があるのでしょうか?
もしよろしければ、ご教授いただけますと幸いです。よろしくお願い申し上げます。
コウメイ:なかなか難しい問題ですね。これについては専門ではないというのと、きちんと理由が書かれている文献を見つけることができなかったので私の考えを書きます。基本的に質問者さんの考えと同じです。
虚血性心筋症とは
虚血性心筋症とは心筋症の一種です。心筋症はいくつか種類に分類されます。
虚血性心筋症はこの中の拡張型心筋症の一種です。
※おそらく問題中の拡張型心筋症とは特発性拡張型心筋症のことだと思います。
なぜ、虚血で心筋が拡張するかですが、それは壊死した部分が拡張するのです。ということは、壊死は広範な範囲ということになります。
おそらく非常に小さな血管の閉塞や一時的な攣縮では広範な壊死は起こりません。そこそこ大きな血管の閉塞で起こるのでしょう。
冠動脈造影で分かるはず
ということは、冠動脈造影をすればきっと閉塞部位が写ります。繰り返しになりますが、冠動脈造影では写らない血管が閉塞している可能性もあります。しかし、それは虚血性心筋症の原因にはならないでしょう。
SPECTが不正解なのは精度が低いから?
虚血性心筋症では広範な梗塞がありますので、SPECTでも異常が見られるでしょう。なのになぜ正解ではないか?
おそらく精度の問題です。つまり、本当は血管が閉塞しているのにSPECTでは反映されなかったり(感度が低い)、逆に本当は血管が閉塞していないのに他の原因でSPECTが異常になったりする(特異度が低い)部分も出てくると思います。
そうすると、どちらの場合も「SPECTだけでは何とも言えないね。冠動脈造影で確認しよう」となります。
だからと言ってSPECTを全くしないわけではありません。冠動脈造影と組み合わせて判断することになるのでしょう。
繰り返しますが、感度・特異度の点から、現段階(2017年)で虚血かどうかを判断するgold standardは冠動脈造影かと思います。
今後、もっともっとSPECTが発達したらSPECTが正解になるかもしれませんが、しばらくは「最も有用な検査は?」と聞かれたら冠動脈造影と選んでおくのがよいかと思います。納得していただけたでしょうか?今回は以上で終わりです。お疲れ様でした(^_^)
※こちらも併せて読むとタメになります。
拡張型心筋症と虚血性心筋症との見分け方