熱中症の輸液製剤の切り替え【これだけ輸液 p149】

コウメイ:『これだけ輸液』を読んでいただいた方からご質問を頂きました.

これからの季節は熱中症患者が増えてくると予想されます.熱中症の場合は,高Na血症の場合同様に細胞外液で血管内脱水を補正してから5%ブドウ糖液に切り替える,という方針でよろしいのでしょうか?

状況にもよりますが,おおよそ,その方針でよいです.

1)まずは細胞外液

熱中症の方が救急外来を受診したときは,病態が分からないのでまずは細胞外液(80mL/時)でライン確保を行います.熱が高い場合,感染症の可能性もありますので,本当に熱中症かを判断します.熱中症の可能性が高い場合は,細胞外液を継続し血管内脱水を補正します※1

2)高Na血症があれば5%ブドウ糖液を検討

熱中症では汗から水分が失われることが多いですが,汗のNa濃度はご存知でしょうか?

個人差や状況による違いはありますが,Na 40mEq/L前後であり,血液よりNa濃度が低めです.よって,高Na血症になる可能性があります.血管内脱水が補正された状態で,高Na血症があれば自由水の補充が必要です(乳酸リンゲルはNa 130mEq/Lであり,血清Na+濃度よりやや低めです.よって,乳酸リンゲルを投与した場合,来院時に高Na血症があっても,低下している可能性があります.自由水の補充を行う前に,血清Na再検が無難です).

意識状態が悪く,経口摂取できなそうであれば,5%ブドウ糖液を投与します(ビタミン製剤を混注).意識清明であれば,点滴静注は終了し経口的に水(5%ブドウ糖液ではなく真水)を摂取していただくのがよいです(喉が乾くので,飲水したいと訴えるはずです).

3)横紋筋融解症がある場合は細胞外液を継続

熱中症では横紋筋融解症(高CK血症)を合併することがあります.特にCK   6,000U/L以上の場合は腎機能障害を起こす可能性があり,細胞外液によるwash outが必要とされます.細胞外液を200〜300mL/時で投与し,尿量や血清CKの推移をみながら調整します※2


※1 熱中症は,症例によって病態や程度に結構差があるので,決まった輸液速度はおそらくありません.血圧,脈拍数,尿量などを診ながら調整します.
※2 横紋筋融解症に高Na血症を合併した場合の輸液をどうするかのはっきりした決まりはおそらくありません.乳酸リンゲルのNa+濃度は130mEq/L程度であり,乳酸リンゲルの投与だけでも高Na血症は改善すると考えられるので,個人的には乳酸リンゲルメインの治療がよいと思います.血清CKが改善傾向で高Na血症が続く場合は,自由水の割合を多くするため,1号液,3号液,5%ブドウ糖液への切り替えを検討します.