※全18回です。目次はこちらです。
コウメイ:今回は白内障について説明していきます。
1)白内障は必ず白いわけではない
まず覚えておいてほしいのは、白内障は必ず白いわけではありません。光の当たり方にもよりますが、茶色く見えます。ですので、「白くないから白内障ではない」と診断しないようにしてください。
2)人工レンズの度数
白内障手術は水晶体を取り去って、人工レンズを入れます。人工レンズは度がついていますので、手術の前に度数を決める必要があります。問題を見てみましょう。
75歳の男性。右眼の視力低下を主訴に来院した。細隙灯顕微鏡検査を施行し、組織の混濁程度から手術適応と判断した。前眼部の写真を別に示す。
術前検査に必要な検査項目はどれか。2つ選べ。
a 眼軸長
b 角膜厚
c 前房深度
d 水晶体厚
e 角膜曲率半径
正解は眼軸長と角膜曲率半径です。眼軸長とは角膜から黄斑までの距離です。眼に超音波を当てて長さを測ります。
角膜曲率半径は角膜のカーブの具合を数値化したものです。特別な器械で10秒程度で測定できます。この2つが人工レンズの度数を決めるときに重要になります。
角膜曲率半径は角膜屈折力と記載している場合もありますが、本質的にはどちらも同じです。ただし、角膜厚は別物ですので注意しましょう。
白内障を診断するときは細隙灯顕微鏡を用います。細隙灯顕微鏡はその名の通り細い光を眼に当てます。先程の問題の写真がそうです。基本的にはこのように細い光で見るのですが、別の見方もあります。それが次の問題です。
3)徹照法とは
徹照法が診断に有用なのはどれか。
a 老視
b 緑内障
c 白内障
d 糖尿病網膜症
e 高血圧網膜症
正解は徹照法ですが、
- 撤照法が有用なのは白内障
- 撤照法が有用なのは白内障
- 撤照法が有用なのは白内障
とだけ覚えても意味がありません。撤照法とは何かを知りましょう。撤照法とは細隙灯顕微鏡で光を細めずに見る方法です。
写真から分かるように、結膜、強膜、虹彩、角膜、水晶体を見ることができます。
白内障は手術で治療をしますが、手術をすれば一見落着ではありません。次の問題がそうです。
4)水疱性角膜症
70歳の女性。右眼の眼痛と視力低下とを主訴に来院した。20年前に右眼の白内障手術と前房眼内レンズ挿入術とを受けている。1年前から徐々に視力が低下し、眼痛も出てきている。視力は右0.01(矯正不能)、左0.6(矯正不能)。眼圧は右19mmHg、左15mmHg。右眼の前眼部写真を次に示す。
右眼で考えられるのはどれか。
a 角膜ヘルペス
b 角膜ジストロフィ
c 角膜辺縁潰瘍
d 水疱性角膜症
e 角膜細菌感染症
角膜は上皮、ボーマン膜、実質、デスメ膜、内皮からなりますが、内皮は角膜にたまった余分な水分を全房に排出する働きがあります。
白内障手術や硝子体手術のときは角膜を通して器具を入れます。そして色々操作しますが、操作すると角膜が引っ張られてゆがみます。すると、角膜内皮にダメージが加わり徐々に水を排出する機能が無くなっていきます。その結果、角膜に余分な水がたまってしまい浮腫になり、白く濁ってしまいます。これを水泡性角膜症と言います。
最近は器械が進歩し、侵襲が少なくなったのでそう多く起こるものではありませんが、こういう合併症もあるというのは知っておくとよいです。
以上、白内障について説明しました。次回はVogt-小柳-原田病について解説していきます。