※全18回です。目次はこちらです。
コウメイ:前回は網膜中心静脈閉塞症について勉強しました。今回は網膜中心動脈閉塞症について解説していきます。名前は「動」と「静」の違いしかありませんが、病態は色々と異なります。
まず覚えておいて欲しいのは眼底の色です。眼に限らず体のどこでもそうですが、動脈が閉塞すると血液が行かなくなるので白くなります。
網膜中心動脈閉塞症では網膜に血液が行かなくなるので、眼底が白くなります。実際の過去問で見てみましょう。
65歳の男性。右眼の急激な視力低下を主訴に来院した。視力は右0.04(矯正不能)、左1.0(矯正不能)。両眼の前眼部、中間透光体および左眼底に異常を認めない。血液検査と尿検査とに異常を認めない。心房細動に対して抗凝固薬を内服中である。右眼底写真(A)と右眼の視野検査の結果(B①〜⑤)とを別に示す。
この患者でみられるのはどれか。
a ①
b ②
c ③
d ④
e ⑤
1)網膜中心動脈閉塞症の網膜は白くなる
主訴は急激な視力低下です。眼に限らず突然の症状は血管病変の可能性が高くなります。それを念頭に画像をみると、眼底が白くなっているのが分かります。
と言われても、慣れていないと眼底が白いかどうかなんて分からないと思います。正常な眼底写真を載せておきますので比較してみてください。
比べてみると白いのが明らかですね。これで網膜中心動脈閉塞症であるのが分かります。
2)cherry red spot:脈絡膜の血管
網膜中心動脈閉塞症の眼底をよく見ると黄斑の部分が赤くなっているのが分かります。これをcherry red spotと言います。
「そんなの知ってるよ」と思われる方もいるかもしれませんが、なぜここが赤くなるか知っていますか?
それは黄斑は周りの網膜より薄いからです。薄いので脈絡膜の血管が透けて見えます。脈絡膜の血管には普通に血液が流れているので赤く見えます。それが透けて見えるので黄斑の部分が赤く見えるのです。
3)網膜中心動脈閉塞症の視野検査:中心暗点
ここまでは理解しやすいですね。しかし、これ以降奇妙なことが起こります。それは、網膜中心動脈閉塞症の患者に視野検査を行うと中心暗点が見られるのです。赤くなっているはずの黄斑が一番見えないのです。なぜでしょうか?
それは、黄斑の細胞は特に虚血に弱いからと考えられます。黄斑は物を見るのに一番大切な部分なので、普段から多くの栄養や酸素を必要としています。そのため、虚血になると特に影響を受け、一気に見えなくなると考えられます。視野検査をすると選択肢⑤の中心暗点が見られます(より詳しくは別記事で説明しています)。
以上で網膜中心動脈閉塞の解説は終わりです。特にcherry red spotについてより理解が深まったのではないでしょうか。
次回は「眼科特有の検査」について解説していきます。