網膜中心動脈閉塞症で中心暗点になる理由~cherry red spotとは~

コウメイ:読者のから網膜中心動脈閉塞症について質問をいただきましたので回答します。まずは質問を見てみましょう。

読者からの質問

問題集の解説で網膜中心動脈閉塞症は、中心窩にだけ血液供給があるのでcherry red spotが見られるとありました。しかし、暗点を来すとも書いてあります。

中心窩だけ血液供給があるのなら中心暗点ではなくむしろ、輪状暗点になるのではないかと思いました。何故、輪状暗点ではなく中心暗点を来すのでしょうか?

なかなか鋭い質問です。しっかり勉強されている方は同様の疑問を持つと思います。

目次

1)解剖(血管系)の確認

まずは眼の解剖(血管系)を簡単に復習しましょう。

画像_網膜の解剖(血管系)
Wies6014, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons, Adapted

中心窩の網膜には血管はなく、脈絡膜には血管があります。網膜は脈絡膜の血流で栄養されています。

中心窩以外の網膜の浅層は網膜血管で、深層は脈絡膜血管で栄養されています。

2)cherry red spotは脈絡膜の血流の色

ここで、網膜中心動脈(図の網膜血管)が閉塞した場合を考えてみましょう。中心窩以外の網膜の浅層は血流がなくなるので普段より白くなります。

網膜中心動脈閉塞症でcherry red spotになる理由
Wies6014, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons, Adapted

その結果、中心窩の脈絡膜が相対的に赤くなります。これが、cherry red spotです。勘違いしやすいのですが、脈絡膜の色が変化するわけではありません。相対的というのがポイントです。

3)網膜中心動脈閉塞症で中心暗点になる理由(私見)

ここで疑問が生じます。

「中心窩の部分の血流は維持されているのに、なぜ中心暗点になるのか?」

この疑問について、色々調べたのですが、しっかりと記載してある教科書や文献を見つけることができませんでした。おそらく詳しくは分かっていないのだと思います。医師国家試験を受ける上では詳細な病態を理解することは不要ですので、あまり深入りしないことをおすすめします。

と言っても気になると思いますので、以下に私見を記載します。

中心窩に入った光がどうなるか考えてみましょう。中心窩の錐体細胞から脳に伝わりますが、網膜の浅層にある神経節細胞に情報を伝達します(青い部分)。

網膜中心動脈閉塞症でcherry red spotになる理由
Wies6014, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons, Adapted

網膜中心動脈閉塞症では、網膜の浅層に血流がないので青い部分は障害を受け、信号を脳に伝えることができなくなります。

4)中心窩以外の部分で見ることができる理由(私見)

ここで、疑問が生じます。

「中心窩以外の部分はなぜ見ることができるのか?」

冒頭で網膜の深層は脈絡膜血管で栄養されていると説明しました。おそらく、浸潤などにより栄養や酸素が浅層にも伝わっており、網膜浅層の機能が残っていると考えられます。

5)中心窩の部分で見ることができない理由(私見)

ここで、疑問が生じます。

「網膜浅層が深層の血流で栄養されるなら、中心窩の機能も残るのではないか?」

中心窩と中心窩以外の大きな違いの一つに細胞の密度があります。中心窩周囲は神経節細胞の密度が高く、中心窩から離れるにつれて細胞の密度が低下します。細胞の密度が高いと栄養や酸素を得ることが難しくなり、神経節細胞が障害を受け、中心窩の信号が伝わらなくなります。

以上から、網膜中心動脈閉塞症ではcherry red spotが見られるのに、中心暗点になるのではないかと考えられます。

あくまで私見ではありますが、病態が気になって色々調べ時間を消費している方にとってお役に立てれば幸いです。

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