【眼科2】網膜剥離 〜裂孔原性、牽引性 、滲出性〜【108A14、100B16】

※全18回です。目次はこちらです。

今回は網膜剥離について説明していきます。まずは学生が勘違いしやすい3点について確認です。

  • 網膜剥離は痛くありません。
  • 黄斑ではなく、周りから剥がれるので全く見えなくなるわけではありません。
  • 何か原因があることが多いです。

これらをふまえた上で詳しく見ていきましょう。

目次

1)網膜剥離とは?

そもそも網膜剥離とはなんでしょうか?当然、網膜が剥離することですが、何がどこから剥がれるかが大事です。

網膜剥離は10層ありますが、上の9層をまとめて感覚網膜(神経網膜)と言います。この感覚網膜が網膜色素上皮(Retinal Pigment Epithlium)から剥がれたものを網膜剥離と言います。

※国試において感覚網膜の9層の名前を細かく覚える必要はありません。

感覚網膜(神経網膜)と網膜色素上皮
画像:Yoan Mboussou, CC BY-SA 4.0 を改変

2)感覚網膜が網膜色素上皮から剥がれる理由

感覚網膜(神経網膜)は原因が無いのに、なぜか剥がれてくるということはありません。何かしら原因があります。基本的に以下の3つが原因になります。

  • 裂孔原性(感覚網膜に孔があく)
  • 牽引性(感覚網膜が引っ張られる)
  • 滲出性(感覚網膜と網膜色素上皮との間に液体がたまる)

3)裂孔原性網膜剥離

裂孔原性とは網膜に裂孔(簡単に言うと孔)ができることによって、網膜剥離が起こるものを言います。

医師国家試験110A57_画像_裂孔原性網膜剥離の眼底写真_改変
画像:医師国家試験110A57を改変

感覚網膜に孔があくと、そこから感覚網膜と網膜色素上皮との間に硝子体が入り込んでしまいます。その結果、感覚網膜と網膜色素上皮とがどんどん剥がれていき、網膜剥離となります。

この裂孔はなぜか突然できるものではありません。何かしら原因があります。代表的なものとして

  • アトピー
  • 外傷
  • 加齢

があります。例えば、アトピーの人だと目が痒いので掻いてしまいます。日中はまだ意識があるので、掻かないようにしようとするのですが、寝ている間は意識が無いので、知らない間に掻いてしまいます。掻いているだけならまだよいのですが、叩いてしまう方もいるようです。その結果、孔があいてしまい、網膜剥離となってしまうのです。

4)網膜剥離の問題

以上、網膜剥離の基礎について勉強したところで、国試の過去問を見てみましょう。

医師国家試験108A14

アトピー性皮膚炎に伴う網膜剥離の種類はどれか。

a 出血性
b 牽引性
c 漿液性
d 滲出性
e 裂孔原性

先ほど説明したので簡単ですね。正解はeの裂孔原性です。

アトピーは眼が痒い⇒眼を掻く(叩く)⇒網膜に孔(裂孔)があく⇒孔から硝子体が感覚網膜と網膜色素上皮との間に入る

上記の機序によって網膜剥離となります。では、網膜剥離はどのように診断したらよいでしょうか?

医師国家試験100B16

網膜剥離の診断に有用でないのはどれか。

a 倒像鏡検査
b Goldmann三面鏡検査
c 超音波検査
d 網膜電図〈ERG〉
e 光覚〈暗順応〉検査

5)網膜剥離で行う検査

正解はeの光覚〈暗順応〉検査ですが、「網膜色素剥離の診断に光角検査が有用でない」とだけ覚えても全く意味がありません。

倒像鏡検査、Goldman三面鏡、超音波検査、網膜電図〈ERG〉が有用であり、それぞれどのような検査か理解するのがよい勉強です。というわけで、それぞれどのような検査か見ていきましょう。

倒像鏡検査

倒像鏡検査はレンズに強い光を通し、眼底を肉眼で見る検査です。

おおよそ下の画像のように見えます(下の画像は正確には眼底カメラで撮影したものです)。

医師国家試験110A57_画像_裂孔原性網膜剥離の眼底写真_改変
画像:医師国家試験110A57を改変

Goldman三面鏡

Goldman三面鏡を使用すると、倒像鏡検査とほぼ同じように見えます。ただし、より立体的に見ることができます。使い方はこちらをご覧ください。

超音波検査

眼科用のちょっと小さめの超音波を使います。眼を閉じた状態で超音波を当てると下のように見えます。

【画像】

真ん中あたりにある線のようなものが剥がれた(感覚)網膜です。

【動画】

動画:UOTW 12 – Ultrasound of the Week 1, Ben Smith, CC BY-SA 4.0

網膜電図

これは正常な網膜電図ですが、この波形が見られなくなります。どうなるかはあまり詳しく覚えてなくて大丈夫です。

網膜電図

以上が網膜剥離の検査となります。いつも言っていますが文字だけでなく、きちんと実物を見ることが大切ですね。今回は以上で終わりです。

次回は糖尿病網膜症について説明していきます。

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