※全18回です。目次はこちらです。
コウメイ:今回は眼窩吹き抜け骨折について勉強していきます。
1)眼窩は下壁が折れやすい
ポイントは窩壁は上下左右ありますが、下壁が折れやすいということです。そこに下直筋がはまることが多く、上を向けなくなります。その結果、上を向いた時に複視が起きます。以上を頭にいれ、早速問題を見ていきましょう。
24歳の男性。1か月前に左眼に野球のボールが当たり、複視が消失しないため来院した。眼球上転時の写真を示す。
考えられるのはどれか。
a 眼窩出血
b 動眼神経麻痺
c 吹き抜け骨折
d 視神経管骨折
e 上眼瞼挙筋断裂
眼にボールが当たった人が上を向けなくなっています。眼窩吹き抜け骨折が考えられます。
15歳の男子。上方を見たときの複視を主訴に来院した。サッカーの試合中にボールが右眼部に当たった後、症状が出現した。正面視で異常は認めない。視力は右1.2(矯正不能)、左1.2(矯正不能)。両眼底に異常を認めない。次に行うのはどれか。
a 脳波
b 網膜電位
c 眼球運動検査
d 外眼筋筋電図
e 眼球超音波検査
吹き抜け骨折が考えられるので、先程の問題のように上を向けない可能性があります。それを確認しましょう。実際に、眼球運動検査をすると上を向けないと思いますが、カルテには何て書きましょうか?
「上を向けない」と書くのはいいのですが、後で見直したり、他の人が見た時に「どのくらい」上を向けないか気になりますよね。
「めちゃくちゃ上を向けない」とか「ほんのちょっと上を向けない」と書くのも分かりづらいです。そこで客観的な検査が必要になってきます。それが次の問題です。
2)Hess赤緑試験
42歳の男性。物が二重に見えることを主訴に来院した。1か月前に交通事故に遭い、その後、複視が出現した。前眼部、中間透光体および眼底に異常を認めない。視力は右1.0(矯正不能)、左1.0(矯正不能)。診断に有用な検査はどれか。
a 光覚検査
b Hess赤緑試験
c Schirmer試験
d 網膜電図〈ERG〉
e 光干渉断層法〈OCT〉
正解はbのHess赤緑試験です。赤緑は言わずにHess試験と呼ばれることの方が多いです。このHess試験ですが、やり方はちょっと難しいので気にしなくていいです。それよりどのような結果かが大事です。Hess試験を行うと下のような結果が返ってきます。
これは簡単に言うと、眼の動きをプロットしたものです。上下左右を見てもらい、眼の動いた範囲をプロットします。特に外側の線に注目しましょう。この図では右眼の上の方の線が左眼に比べ低いですね。つまり、右眼はあまり上を向けないことが分かります。これがHess試験です。
視力検査のときに行うことがある、「赤と緑の文字のどちらが見やすいか」という検査とは別物です。
以上、眼窩吹き抜け骨折について説明しました。次回は白内障につてい説明します。