※全18回です。目次はこちらです。
コウメイ:今回は急性緑内障発作について解説していきます。単に緑内障発作と言ったりもします。
1)緑内障と緑内障発作は別物
前回説明したように緑内障と緑内障発作は別物ですので気をつけてください。緑内障は年単位で徐々に悪化しますが、緑内障発作は時間単位でめちゃくちゃ急激に悪化します。
しかも、緑内障の眼圧は20とか25mmHgなのですが、緑内障発作は50とか60mmHgになります。無治療だと失明する可能性が高いです。
2)緑内障発作の機序
ではなぜこんなに眼圧が高くなってしまうのでしょうか?それは水晶体が厚くなるからです。緑内障の話をしているのになぜ水晶体が出てくるのでしょうか?ちょっとよく分からないですよね。詳しく説明していきましょう。
房水は毛様体で産生されて、水晶体と虹彩との間を通り、隅角にあるシュレム管から吸収されるのは知っていますよね。水晶体は加齢と伴に少しずつ厚くなります。そうすると、水晶体と虹彩との隙間(緑破線)が狭くなります。
その結果、房水の流れが悪くなり後房に房水がたまります。すると、後房の圧が上がり虹彩と角膜の感覚が狭くなり(赤破線)、前房からシュレム管へ流れる房水が低下します。その結果、数時間〜数日の間に眼圧が50や60mmHg以上になってしまいます。
先程も言いましたが、無治療では失明する可能性が高いです。では、どのように治療すればよいでしょうか?
3)緑内障発作の治療
まずは点眼です。ピロカルピン(縮瞳薬)を頻繁に点眼します。瞳孔を縮瞳させることで房水の排出がよくなります。そして、マンニトールの点滴も行います。浸透圧の高いマンニトールを血管に入れることで、房水を血管に引っ張り、眼圧を下げます。
さらに、虹彩にレーザーを当て、孔を開けます。
するとそこから房水が前房に移動できるので眼圧を下げることができます。レーザーは眼科医しかできませんので、すぐに眼科医に連絡することが大切です。
これで治療については大丈夫ですね。ではそもそもですが、どうやって緑内障発作と診断しますか?「眼圧が50や60mmHgになるなら診断なんて簡単でしょ!!」と思われた方は甘いです。
確かに眼圧を測ることができれば緑内障発作と診断できますが、皆さん眼圧を測ることできますか?測れないですよね。基本的に眼科医しか測ることができません。
では、眼科医以外はどのように診断すればよいのでしょうか?それが次の問題になります。
4)緑内障発作の特徴1:毛様充血
毛様充血をきたすのはどれか。
a 結膜炎
b 加齢黄斑変性
c 網膜色素変性
d 正常眼圧緑内障
e 急性閉塞隅角緑内障発作
正解はeの急性緑内障発作です。毛様充血を見たら緑内障発作を鑑別に挙げるようにしましょう。
ここで、「毛様充血はが見られたら緑内障発作、毛様充血はが見られたら緑内障発作、毛様充血はが見られたら緑内障発作」と、文字だけ覚えても意味がありません。
毛様充血とは何かということをきちんと理解しましょう。毛様充血とは特に虹彩と強膜との間の充血が強いものを言います。
これを見たら緑内障発作を考えましょう。もう一つ有用な所見があります。それが次の問題です。
5)緑内障発作の特徴2:瞳孔散大
正しいのはどれか。2つ選べ。
a 瞳孔径は加齢とともに大きくなる。
b 瞳孔散大筋はコリン作動性である。
c 瞳孔括約筋は動眼神経支配を受ける。
d 近見によって縮瞳する。
e 眼圧上昇によって縮瞳する。
正解はc、dですがそれより覚えておいて欲しいのはeです。「眼圧上昇によって散瞳する」が正解になります。緑内障発作では散瞳していますので、こちらを見逃さないようにしましょう。そして、速やかに眼科医に連絡しましょう。
以上、緑内障発作について解説してきました。これで緑内障と緑内障発作を間違うことはないでしょう。
次回は加齢黄斑変性について勉強していきます。