※全18回です。目次はこちらです。
コウメイ:今回は原発開放隅角緑内障について解説していきます。通常、「緑内障」と言ったらこれのことになります。次回勉強しますが、「緑内障発作」は別の病気ですので頭に入れておいてください。
1)緑内障は自覚症状がない
まず、緑内障について勘違いしやすいところから説明します。緑内障は眼圧が高くなる病気なので、一見すると眼が痛くなりそうですが、痛みは通常ありません。痛み以外の自覚症状も基本的にありません。
「えっ、緑内障は視野欠損があるから自覚症状はあるのでは?」とお思いの方もいるかもしれません。確かに視野欠損はあるのですが、人間の脳は視野欠損した部分を補正するので本人は「視野が欠けている」とか「見づらい」とかいう自覚症状はありません。
もちろん、最終的には見づらいという自覚症状が出てくるのですが、それはかなり進行しています。多くの方に自覚症状はありません。
視野検査をすると欠損部位が分かるのですが、症状がないのに病院に行く人はいません。ですので、多くの方は自分が緑内障かどうかは分かりません。そして、気がついた時にはかなり進行している状態となります。
そのため、緑内障は失明原因の1位なんです。じゃ、どうすればよいかというと、眼科に行き、定期的に検査するしかありません。と言っても、緑内障は年単位でゆっくり進行する病気なので年に1度位で大丈夫です。
2)緑内障の検査:ゴールドマン視野計
では、眼科でどのような検査をするか詳しく見ていきましょう。まずはこちらです。
この器械はゴールドマン視野計といい、その名の通り視野を検査する器械です。
簡単に測定法を説明します。視野計の外側から明るい光が中心に向かって移動します。被験者は見えたらボタンを押し、検査者はそこに点を打ちます。
次に、明るい光を別の位置から中心に向かって移動させ、被験者は見えたらボタンを押し、検査者はそこに点を打ちます。
また明るい光を別の位置かから中心に向かって移動され、被験者は見えたらボタンを押し、検査者はそこに点を打ちます。以後、これを繰り返します。最後に点を線で結びます。
これが視野検査の一番外側の円になります。次に、明るさをちょっと下げて、先程と同様のことをし、最後に点を結び円にします。今回は明るさを下げたので、眼の中心(黄斑)に近い部分でないと見えません。ですので、今回の円は前回の円の内側にきます。
次に明るさをもっと下げて今までと同様のことをします。すると、より内側に近い部分に円ができます。これを何回か繰り返すといつも見ているこちらの図になります。
視野検査の決まりとして、全く見えてない部分は塗りつぶすことになっています。正常な人でもマ盲点は見えませんので、塗りつぶされています。逆に、正常そうな視野検査で、1か所塗りつぶされている斜線があったらそれはマ盲点です。
緑内障ではBjerrum暗点や傍中心暗点や鼻側欠損が有名です。なぜこのような視野になるかはあまり気にしなくて大丈夫です。
3)緑内障の問題演習
以上、視野検査ついて解説しました。では、実際の過去問で練習してみましょう。
左眼の視野(①~⑤)を別に示す。
原発開放隅角緑内障でみられるのはどれか。
正解は鼻側欠損が見られる④です。
①は耳側がよく見えていません。右眼も同様の所見だったら両耳側半盲であり、下垂体腺腫や頭蓋咽頭腫などが考えられます。
②は輪状暗点ですね。網膜色素変性などでしょうか。
③は中心暗点ですね。視神経炎などでしょうか。
⑤は下1/2半盲です。虚血性視神経症などでしょうか。
以上、視野検査についてでした。緑内障は視野の異常がでるので、視野検査をするのはイメージしやすいと思います。
4)緑内障の眼底検査:C/D比の拡大
緑内障の検査は視野検査だけではありません。眼底検査も重要です。もしかすると、「緑内障なのになぜ眼底を見るんだ?」と思われる方もいるかもしれませんが、実はこちらの方が本質的です。
緑内障は眼圧が高くなる病気ですが、眼圧が高くなるとどうなるのでしょうか?そもそも眼圧とは、房水や硝子体による圧力のことであり、眼圧が高いとはつまり、房水や硝子体の圧が高いことを意味します。その結果、視神経や網膜に必要以上の圧がかかってしまいます。
ところで、正常な視神経乳頭って見たことありますか?実は真ん中が少しへこんでいます。
「少しだけ」というのがポイントです。へこんだ部分は眼底検査では白く見えCupと言います。周りのオレンジの部分はへこんでいない視神経乳頭でDiskと言います。Cupは正常眼底だとほとんど分からない場合もあります。下の写真は黄斑円孔の眼底写真ですが、視神経乳頭は正常と考えられます。Cupはほとんど分かりません。
緑内障では視神経乳頭に圧がかかるので、へこんだ部分つまりCupが拡大します。その結果、CupとDiskの比(C/D比)が大きくなります。C/Dが0.6以上だと緑内障の可能性が高くなります。
5)緑内障の眼底検査:神経線維束欠損(NFLD)
ところで、網膜の表面って何色か知っていますか?「茶色!!」と答えた方、残念です。実は白です。網膜は10層からなり、大きく網膜色素上皮と感覚網膜に分けることができるのは網膜剥離のところで説明しました。
この感覚網膜には視神経が含まれます。解剖の時に見たように神経って白いですよね。だから感覚網膜は白いんです。
網膜色素上皮はその名の通り、色素上皮なので茶色く見えます。よって、網膜は茶色く見える網膜色素上皮の上にうっすら白く視神経が見えるのが正常です。
「いや、網膜に白い部分なんてないぞ」と思われる方は網膜剥離の写真を見てみましょう。
剥がれた感覚網膜は白いでしょ。「網膜の表面は白い」というのを頭に入れておいてください。
話を緑内障に戻します。緑内障は硝子体の圧が高くなり、網膜に必要以上の圧がかかる病気と説明しました。そのため、視神経にダメージが加わり視神経が死んでしまいます。
視神経にも圧に強いものから圧に弱いものまで色々あり、まずは一部が死んでしまいます。その結果、一部の網膜から視神経がなくなってしまいます。
するとどうなるでしょうか?その部分は白くなくなり、まっ茶色になりそうじゃないですか?実際の写真がこちらです。
写真なのでちょっと見づらいのですが、周りはうっすら白くなっているのに、一部がまっ茶色になっているのが分かります。ここを神経線維束欠損(NFLD)と言います。このように眼底検査では、C/D比の拡大とNFLDの有無を確認します。検査については以上です。
治療はプロスタグランジン薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬を点眼し眼圧を下げます。治療についてはこの程度理解しておけば大丈夫でしょう。
※マンニトールの点滴は次の記事でとりあげる緑内障発作の治療ですので、ごっちゃにしないようにしましょう。
以上、緑内障について解説しました。特に、緑内障の本質や検査についてよく理解していただけたかたと思います。次は緑内障発作について解説していきます。