コウメイ:現在、眼科を連載で解説しておりますが、皮膚科についてもお伝えしたいものがあったので記事にしたいと思います。それは、「固定薬疹で貼付試験(パッチテスト)を行う理由」です。まずは過去問を見てみましょう。
47歳の女性。口唇と体幹との皮疹を主訴に来院した。2日前から発熱と咽頭痛とがあった。昨日、市販の感冒薬を内服した。今朝、軽度の痛みを伴う皮疹が出現した。口唇(A)と体幹(B)との写真を別に示す。
検査として適切なのはどれか。
a 細菌培養
b 貼付試験
c KOH法鏡検
d ウイルス抗体価
e スクラッチテスト
1)ダメな解説
正解はbの貼付試験ですが、まずはダメな解説を紹介します。某問題集にはこのように書いてありました。
「固定薬疹にはスクラッチテストではなく貼付試験を行う」
これはダメな解説ですので、参考にしないでください。
まず、「固定薬疹にはスクラッチテストではなく貼付試験を行う」というのは、「正解:b(貼付試験)」と書いてある時点で分かります。その後、わざわざ「固定薬疹にはスクラッチテストではなく貼付試験を行う」と書く意味はありません。その理由が重要です。
2)Ⅰ型アレルギーとⅣ型アレルギーの復習
Ⅰ型アレルギーの検査としてプリックテスト、スクラッチテスト、皮内テストがあり、Ⅳ型アレルギーの検査として貼付試験(パッチテスト)があります。
普通、薬の副作用と言えばⅠ型アレルギーが有名です。「抗生剤投与10分後に、気分が悪くなり、血圧低下が見られる」などが典型的なエピソードです。分かりやすいですね。
2)固定薬疹はⅣ型アレルギー
一方、Ⅳ型アレルギーで有名なのは金属アレルギーでしょうか。「時計や聴診器を同じ部分に長時間つけていると皮疹が起こる」というものです。分かりやすいですね。
しかし、固定薬疹は薬を内服したのにも関わらずⅣ型アレルギーが起こるのです。普通に考えれば薬は血液を介して全身に運ばれるので、全身に皮疹が生じても良さそうですが、皮膚の一部のみでⅣ型アレルギーが起こるのが特徴です。ですので、Ⅳ型アレルギーの検査である貼付試験(パッチテスト)を行います。
ただし、なぜ固定薬疹でⅣ型アレルギーが起こるかは詳しくは分かっていないと思います。しかし、皮疹を調べるとマクロファージやT細胞が関与しておりⅣ型アレルギーであるのは間違いありませんので、検査は貼付試験(パッチテスト)となります。