※お陰様で『これだけ心電図』の重版(第4刷)が決定しました。感謝の意とより詳しい説明のため連載で記事を書くことにしました。本記事は連載の6回目になります。途中からでも理解できますが、初めから読むことをお勧めします。
コウメイ:WPW症候群ではΔ波が見られたり、頻拍の原因になったりすることは有名ですが、A型、B型、C型と分類されるのはそれほど知られていないと思います。この機序を理解するとなると結構難しく、かつ心電図初学者のためになりませんので本書では説明しませんでした。
しかし、分類(発作性上室性頻拍症や房室ブロックなども)は問題にしやすいので、『心電図検定 公式問題集&ガイド』では111問中5問もWPW症候群の分類を問う問題が掲載されています。知っていないと解けないので補足していきます。
WPW症候群は副伝導路の場所(リエントリーの経路)によってA型、B型、C型に分類できます。
1)WPW症候群 A型の病態
A型は左房と左室との間に副伝導路があります。A型が最も多いです。
![A型WPW症候群の病態](https://ishikokkashiken.com/wp-content/uploads/2018/08/41c9a07417357ec648508709892b1b0b.png)
2)WPW症候群 B型の病態
B型は右房と右室との間に副伝導路があるものを言います。
![B型WPW症候群の病態](https://ishikokkashiken.com/wp-content/uploads/2018/08/5b30cd3bed590aa9a277af68295c53ef.png)
3)WPW症候群 C型の病態
C型とは心室中隔に副伝導路があるものを言います。頻度は稀です。
![C型WPW症候群の病態](https://ishikokkashiken.com/wp-content/uploads/2018/08/7e0a1b68bf4eca3cf245739b4de23ece.png)
4)A型、B型、C型の見分け方
※本書で「心電図は病態から考えるべきものと、丸暗記した方がよいものがある」と説明しました。⊿波については病態から考えるべきですが、A型、B型、C型の見分け方についてはほぼ丸暗記することをお勧めします。病態を考えてもいいのですが、やや納得できない部分もあり最終的に暗記することになると思います。
全てについて共通するのはPQ間隔短縮です。これは病態を考えると当たり前ですね。分類はV1誘導で判断します。
5)WPW症候群 A型の心電図病態
心電図の参考書に載っていたり、国家試験で出題されたりするのがA型です。V1誘導でR波 > S波 がポイントです。ピンクの矢印の部分がΔ波です。
![WPW症候群の心電図_A型](https://ishikokkashiken.com/wp-content/uploads/2018/08/802501d23be8ae73fda34e6ffc883a14.png)
6)WPW症候群 B型の心電図
A型に似ています。ただしV1誘導でR波 < S波 とA型の逆になっているのがポイントです。R波は非常に小さい場合があり、その場合R波が下がっている部分に陰性の⊿波(青矢印)が見られることがあります。もちろん、A型と同じように、R波が上がっている部分にも陽性の⊿波(ピンク矢印)が見られます。
![WPW症候群の心電図_B型](https://ishikokkashiken.com/wp-content/uploads/2018/08/ca148125c84c19dd84cf62ced8092aca.png)
7)WPW症候群 C型の心電図
V1誘導でQS波になっているのがポイントです。QS波の初めの方に陰性の⊿波(ピンク矢印)が見られ、心筋梗塞でみられるQS波とは若干形が異なります。
![WPW症候群の心電図_C型](https://ishikokkashiken.com/wp-content/uploads/2018/08/7c4482f0a1d18a82bfe9028ebe4d5e65.png)
以上でWPW症候群の分類についての説明は終わりです。
冒頭でも説明しましたが、WPW症候群の分類は心電図を学ぶ上で優先度は低いです。特に上記の解説を読んで、「意味が分からない」と思った方は基礎力が足りていませんので、『これだけ心電図』を読んでいただき基礎力をつけることをお勧めします。
![](https://ishikokkashiken.com/wp-content/uploads/2018/08/4ff8471b8ae83c9f99102d7a49f13aeb-300x177.jpg)