(10) 効率の良い心電図の勉強法(お勧めの参考書)

※お陰様で『これだけ心電図』の重版(第4刷)が決定しました。感謝の意とより詳しい説明のため連載で記事を書くことにしました。本記事は連載の10回目(最終回)になります。途中からでも理解できますが、初めから読むことをお勧めします。

コウメイ:2015年に看護師向けの心電図本『看護の現場ですぐに役立つ モニター心電図』を、2018年に研修医向けの心電図本『これだけ心電図』を執筆しましたが、その過程で効率の良い心電図の勉強法について色々考えてきました。現在、私が最も効率の良いと思う勉強法についてご説明します。

目次

1)講義系参考書→辞書系参考書

心電図の参考書は大きく講義系参考書と辞書系参考書の2種類に分けられます。

講義系参考書は心電図波形を読む際の基礎知識がメインに書かれています。基本的に初学者向けであり、細かな知識や例外は省かれていることが多いです。その分読みやすく、通読することができます(通読しなければいけません)。

辞書系参考書は分かりにくい心電図やより深く知りたい心電図に出会ったときに詳しく調べるためのものです。講義系参考書より細かな知識や例外について書かれていることが多いですが、基礎知識がないと使いこなすのが難しいです。おそらく通読は無理でしょう。

これら2種類を区別することは非常に大切です。当然ですが、講義系参考書を読んでから辞書系参考書を読むことになります。

2)お勧めの講義系参考書

では講義系参考書として具体的に何を読めばいいかですが、『これだけ心電図』をお勧めします。研修医時代から有名な心電図の参考書はある程度読みましたし、前書『看護の現場ですぐに役立つ モニター心電図』を執筆するにあたり類書はかなり研究しましたが、「まずはこれを読めば良い!!」とお勧めできる本はありませんでした(そのため本書を作成することになりました)。

もちろん部分的に本書より詳しい本は存在します(不整脈なら・・、心筋梗塞なら・・)。しかし、それはある程度知識がある方向けのものです。心電図初学者が必要な知識を網羅的に学ぶのに適した本は『これだけ心電図』であると自負しております。

3)お勧めの辞書系参考書

辞書系参考書でお勧めなのはご存知の方も多いかもしれませんが、『心電図の読み方パーフェクトマニュアル』です。色々な心電図が載っています。ただし、説明は簡易な部分があったり、所見があるのに説明されていない部分があります。基礎的な知識がないと使いこなすことはできません。まして初学者が通読するための本ではありません。繰り返しになりますが、この本を使いこなすにはまず講義系参考書を読むことが必要です。

4)おすすめの問題集

講義系参考書を読んだからといって、心電図に慣れないとなかなか読めるようにはなりません。「心電図に慣れる」と聞くと臨床で実際に心電図を読むことをイメージしますが、その前に問題集を活用することをお勧めします。

緊急性が高かったり忙しかったりすると指導医からまとまったフィードバックを得るのが難しいです。また、どうしても症例は限られたものになってしまいます。問題集であれば様々な疾患を経験でき、解説を読むことでフィードバックを得ることができます。

心電図初学者にとっては臨床で生の心電図を見るより得られるものが多いでしょう。

問題集は色々ありますが、『上級医がやっている 危ない心電図の見分け方』は読みやすくおすすめです。

問題集を解いていると「もう少し詳しく調べてみたい」と思うようになります。そのときが辞書系参考書の出番です。辞書系参考書は疑問があったときに読むのが一番記憶に残り、効率的な使い方です。

5)まとめ

まとめると、以下のようになります。

  1. 講義系参考書を通読する
  2. 問題集を解く(より詳しく知りたい場合は辞書系参考書を活用する)
  3. 実臨床で実践(分からない心電図に出会ったら辞書系参考書を活用する)

6)補足

専門性の高い参考書

心電図の本には不整脈なら・・、心筋梗塞なら・・というものが存在します。医大生や研修医は心電図以外にも学ぶことがたくさんありますので、必須ではありませんが、もし読むのであれば上記1〜3を行ったに挑戦してみるのがよいでしょう。

試験

モチベーションの維持や知識の確認のために試験(心電図検定)を受けてみるのもありです。

以上が現在の私が考える最も効率の良い心電図の勉強法になります。心電図初学者の参考になれば幸いです。

『レジデントのためのこれだけ心電図』

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