※お陰様で「これだけ心電図」の重版(第4刷)が決定しました。感謝の意とより詳しい説明のため連載で記事を書くことにしました。本記事は連載の5回目になります。途中からでも理解できますが、初めから読むことをお勧めします。
コウメイ:本書では発作性上室性頻拍は「命令が心房⇒心室⇒心房⇒心室・・とクルクル病気」と説明しました。この経路は大きく房室回帰性頻拍(房室リエントリー頻拍)、後者を房室結節リエントリー頻拍に分けられます。
個人的にはこれらを区別する優先度は低いと考えているので本書には詳しく記載しませんでした。しかし、区別の仕方を知らないと『心電図検定 公式問題集&ガイド 問題48、49』を解くことができませんので補足します。
1)房室回帰性頻拍
心房と心室の間に伝導路が存在するためリエントリーが起こるものを言います。簡単に言えばWPW症候群です。本書p63のイラストを見ていただければ分かりますが、この経路は大きいため心房と心室に命令が伝わるのにタイムラグが生じます。つまり、心房が収縮する時間帯と心室が収縮する時間帯は別々になります。
ただし、正常とは経路が違いますので、普通の場所にP波は存在しません。QRS波の直後やT波の中にP波らしきものが見えることがあります。見えたとしてもほんの僅かであり、誘導によっては全く分かりません。
2)房室結節リエントリー頻拍
房室結節の間でリエントリーが起こるものを言います。狭い場所で命令がクルクル回るので心房と心室にほぼ同じタイミングで命令が伝わります。よって心房と心室は同じ時間帯で収縮します。P波はQRS波に埋もれるので見えません。
以上が見分け方ですが、P波は非常に分かりにくいので、見つけることができないからといって房室回帰性頻拍を否定できるものではないと思います。とはいえ、「P波らしきものは存在しないが、よく調べてみると房室回帰性頻拍だった」なんて問題は出題されませんので、試験では
- P波らしきものが存在する⇒房室回帰性頻拍
- P波らしきものは存在しない⇒房室結節リエントリー頻拍
という認識でいいかと思います(これは暗記するものではなく自分で導き出すものです)。
以上、発作性上室性頻拍の分類についてでした。