穿孔に造影剤は禁忌?3

最終確認日:2017/07/28 最終更新日:2017/07/28

コウメイ:読者の方よりクモ膜下出血に脳血管造影は禁忌なのでは?」との質問をいただいたので解説します。まずは質問を見てみましょう。

読者からの質問

質問者:第100回医師国家試験H-18について質問です。

【第100回医師国家試験H-18】
55歳の男性。突然激しい頭痛が起こり、意識がもうろうとしてきたため救急車で搬送された。頭部単純CTを示す。

クモ膜下出血のCT【第100回医師国家試験H-18】

次に行う検査はどれか。

  1. 脳脊髄液検査
  2. 脳波
  3. 脳血管造影
  4. 頭部MRI
  5. 脳SPECT

正解:c

質問者:正解は脳血管造影ですが、「造影剤が血管外に出てはまずいのでは?」と思い選べませんでした。造影剤はくも膜下腔にあっても問題ないということでしょうか?

また、なぜ画像検査(CT、MRI)より血管造影が優先されるのでしょうか?

 

禁忌は消化管穿孔にバリウムのみ

コウメイ:結論から言います。消化管穿孔にバリウムは禁忌禁忌はこれだけです。他にはありません。

 消化管穿孔にバリウムは禁忌

 

以下は禁忌ではありません

  • 消化管穿孔に水溶性造影剤
  • 消化管穿孔に血管造影
  • 大動脈解離にバリウム ※やる意味はありませんが。
  • 大動脈解離に水溶性造影剤 ※やる意味はありませんが。
  • クモ膜下出血に血管造影
  • クモ膜下出血にバリウム ※やる意味はありませんが。
  • クモ膜下出血に水溶性造影剤 ※やる意味はありませんが。
  • クモ膜下出血に血管造影

大事なので何度も言います。禁忌は

  • 消化管穿孔にバリウム
  • 消化管穿孔にバリウム
  • 消化管穿孔にバリウム
  • 消化管穿孔にバリウム
  • 消化管穿孔にバリウム

これだけです。これだけ言えばさすがに大丈夫ですね。クモ膜下出血に脳血管造影は禁忌ではありません。禁忌ではないというよりむしろやるべきです。

 

クモ膜下出血に脳血管造影を行う理由

コウメイ:なぜ単純CTでクモ膜下出血と診断できたのにわざわざ脳血管造影を行うのでしょうか?

 

学生B:なんとなくですかねぇ。

 

コウメイ:なんとなくで検査は行いません。 クモ膜下出血と診断した後は何をしますか?

 

学生B:治療です。クリッピングやコイル塞栓を行います。

 

コウメイ:そうですね。ではどの血管を治療しますか?

 

学生B:そりゃ、動脈瘤の部分ですよ!!(完璧な答えだな)

 

コウメイ:それはどこですか?具体的に指さしてください。

 くも膜下出血の治療

 

学生B:えっ、そう言われるとどこだ?分かりません・・。

 

コウメイ:指を差せなくて当然です。単純CTではクモ膜下出血と診断はできますが、どの血管を治療すればいいかまで詳しくは分からないんです。そもそもCTでは脳の細い血管は写りません。そこで脳血管造影の出番です。脳血管造影を見たことありますか?

 

学生B:なんか脚からやるやつですか?

 

コウメイ:それです。大腿動脈からカテーテルを入れ、脳血管(内頚動脈、椎骨動脈)まで進めます。そこで造影剤を一気に注入し撮影を行います。1本、1本の血管がかなり鮮明に映しだされます

脳血管造影 

 

この検査でどこの血管に動脈瘤があるか診断し、クリッピングやコイル塞栓を行います。

 

学生B:なるほど。そのためにわざわざ脳血管造影を行うんですね。いや~素晴らしい検査ですね!!

 

コウメイ:そうです。血管をかなり鮮明に見ることができる素晴らしい検査なんです。でも・・

 

学生B:でも?

 

コウメイ:やるのは大変なんです。文字だけで見るとあまり実感がないかもしれませんが実際にやるのは大変だし時間がかかります。できるならやりたくありません。

 

CT-angioとMRA

そこで考え出されたのがCT-angioです。 造影剤を用いCTで脳血管を撮す撮影法です。
CT-angioの画像

最近はMRAというのもあります。造影剤を用いずにMRIで血管を撮影する技術です。
MRAの画像

 

学生B:じゃ、全部MRAを行えばいいじゃないですか?

 

コウメイ:そうしたいところなんですが・・、これらの機械は最新のものであり非常に高価です。どこの病院にもあるわけではありません。それと、MRAはCT-angioに比べ画像が良くありません。治療に用いるにはイマイチです。

※自分の目で確かめてください。

CT-angioも脳血管造影ほどは鮮明には写りません。CTの造影剤は末梢の静脈から注入するので、脳血管に直接造影剤を注入する脳血管造影にはかなわないんです。

ですので非常に小さい病変を見つけるには脳血管造影を行うしかありません。

 

本症例で考える

以上をふまえたうえで、国試の問題を考えてみましょうまずこの問題は8年前の問題です。あまりCTやMRIが発達していません。当時であれば脳血管造影しか選択肢はありません。今はCT-angioが選択肢にあれば正解になりえます。MRIはまだ治療のための検査としてはイマイチです。

今度さらにCTやMRIが発達すると脳血管造影は行わずにCTやMRIだけで十分となる時代が来るかもしれませんが、今のところは説明した通りです。かなり長くなったのでまとめます。

ポイント
  • 消化管穿孔にバリウムは禁忌
  • 血管造影が禁忌になることはない
  • クモ膜下出血の治療には脳血管造影が必要
  • CT-angioは治療のための検査となりうる
  • MRI(MRA)はまだダメ

 

これで造影剤は禁忌と短絡的に覚えているひとがゼロになることを望んでいます。

こちらも読んで造影剤に対する理解を深めてください。
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