コウメイ:読者の方からコレステロールとトランスフェリンの合成について質問をいただきました。それぞれの合成がどのように調節されているか詳しく説明していきます。まずは質問を見てみましょう。
ネット講座で、ネフローゼ時にはアルブミンの合成能が上がり、それにつられコレステロールも増加すると習いました。
しかし違う授業では、慢性炎症時にはCRPなどの蛋白を肝臓は作るので、トランスフェリンの合成能は相対的に下がってしまうと習いました。
二つの説明に矛盾を感じるのですが、本質的には一体何が正しいのでしょうか。回答をよろしくお願いします。
確かにその説明を聞くと、どう理解していいか困りますね。しかし、この記事を読めば納得できはずです。
1)アルブミンが合成されるときはアポ蛋白Bも合成される
ネフローゼでは糸球体からアルブミンが漏れてしてしまうので、血漿中のアルブミン濃度が低下します。それに対処するため肝ではアルブミンの合成能が上がります。同時にアポ蛋白Bの合成能も上がります。
アポ蛋白Bとはアポ蛋白の一種です。アポ蛋白にはA、B、C、Eがあります。アポ蛋白Bはコレステロールを包みLDLコレステロールとなります。その結果、ネフローゼでは、血中コレステロールが増えます。
ではなぜアポ蛋白Bが増えるかですが、詳しくは分かりません。これ以上は深入りしないのが懸命です。
2)慢性炎症ではフェリチン(貯蔵鉄)が増加する
トランスフェリンの役割は鉄の運搬です。十二指腸で吸収された鉄と結合し骨髄や肝臓へと運ばれます。体内の鉄が少なければ鉄を少しでも吸収しようとトランスフェリンは増加します。体内の鉄が多ければそれ以上鉄を吸収しても意味が無いのでトランスフェリンは減少します。
慢性炎症のときはフェリチンからFeへの変換がされません。
※この理由はもう少し詳しく説明できるのですが、知ってもあまり意味がないので結果だけ覚えれば大丈夫です。
体内の鉄の指標はFeではなくフェリチンになりますので、慢性炎症があると体内では鉄が多いと判断します。その結果トランスフェリンは低下します。つまり、慢性炎症ではトランスフェリンは低値となります。
以上で解説は終わりです。