2-2 心室頻拍の心電図【ブログ版 これだけ心電図】

※本記事は連載「これだけ心電図」の一部です。こちらが目次へのリンクになりますので一番初めから読むことをお勧めします。

コウメイ:今回は心室頻拍について勉強していきます。今まで説明してきたように、覚えるべきは心電図ではなく病態です。というわけで、まずは心室頻拍の病態を見ていきましょう。

目次

1)心室頻拍の病態 〜心室から基礎的な命令がたくさん出る〜

正常なら心臓を動かす命令は洞結節から出て、「心房 → 房室結節 → ヒス束→ 右脚・左脚→ プルキンエ線維→ 心室」と伝わりますが、心室頻拍はこの命令が速いペースで心室から出ている病気です。

心室頻拍のイラスト_これだけ心電図
図:拙著『これだけ心電図』(日本医事新報社刊)より

心室細動も心室から命令が出ますが、どう違うのでしょうか?

心室細動は心室の至るところで命令が出ていますが、心室頻拍は心室の1か所から一定のリズムで命令が出ています。

ここまでの病態から、心電図はどのようになりそうか考えてみましょう。

心室が速いペースで収縮するのでQRS波がたくさん見られそうです。一方、心房は洞結節からの命令で収縮しているので、正常なP波が見られそうですが、たくさん存在するQRS波と重なって、どこにあるか分からなくなります。

結局、QRS波のみが見られる心電図になります。次にどのようなQRS波になるか考えてみましょう。

2)幅の狭いQRS波と幅の広いQRS波

正常な命令は洞結節から出て、「心房 → 房室結節 → ヒス束→ 右脚・左脚→ プルキンエ線維→ 心室」と伝わるのは何度か説明しました。この経路は命令専用なので速いです。

ところで、QRS波は心室への命令の伝わりを意味します。よって、正常に命令が伝われば、QRS波が見られる時間は短いです。つまりQRS幅が狭くなります。

狭いQRS波

一方、心室頻拍は心室のある部分から命令が出て「心室の一部 → 心室の一部→ 心室の一部→ 心室の一部」と伝わります。

心室頻拍のイラスト_これだけ心電図
図:拙著『これだけ心電図』(日本医事新報社刊)より

心室は収縮するのが主の目的であり、本来命令を伝えるものではありません。ですので、命令の伝わりはゆっくりです。よって、QRS波が見られる時間は長くなります。つまりQRS幅が広くなります。こちらは異常です。

広いQRS波

3)QRS幅の狭い、広いの基準

QRS波には狭い、広いの2種類があることと、そのメカニズムは分かりました。ところで、QRS幅が狭い、広いの基準ってどうなっているのでしょうか?

正常値はとりあえず全て覚えるのではなく、今回のように疑問に思ったり、必要になったときに覚えるのがいいです。

心電図をよ〜く見るとマス目がかいてあります。このマス目3個未満が狭い3個以上が広いとなります
※マス目が2.9個、3.0個、3.1個など微妙なものは出てきませんので、境界についてあまり神経質になる必要はありません。

4)心室頻拍の心電図

今までの説明をまとめると、心室頻拍の心電図は

  • 幅の広い(マス目3個以上)QRS波が
  • 一定のペースで
  • たくさん見られる

のが特徴となり、下のようになります。

心室頻拍の心電図

心電図所見は覚えるものではなく、病態から考えるものと言ってきた意味が分かってきたでしょうか?病態重視で心電図を考えられるようになると勉強が楽しくなります。

次回は心静止について説明していきます。

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