コウメイ:読者の方から眼底所見について質問をいただきました。同じように悩んでいる方多いのではないでしょうか。まずは質問の元になった問題を見てみましょう。
動脈硬化を示唆する眼底所見はどれか。
a 黄斑浮腫
b 毛細血管瘤
c 網膜新生血管
d 動静脈交叉現象
e 視神経乳頭陥凹
この問題に対し以下のような質問を持ったようです。
Scheie分類、Keith-Wagener分類、Davis分類は国家試験でしばしば出題されています。いつも、高血圧性変化、動脈硬化性変化、糖尿病性変化のどれがどれだか混乱してしまいます。機序を考えてみても、なぜこれらの所見になるのかわかりません。
例えば動脈硬化では血管の狭細化がみられるような気がするのに、Scheie分類では高血圧性変化となっています。これだけでなく、それ以外のほぼすべての所見の機序がわかりませんこの辺りは割り切って、丸暗記するしかないのでしょうか?
確かに分かりにくいですが、全く丸暗記する必要はありません。以下の記事をしっかり読めばかなりスッキリすると思います。
1)高血圧と動脈硬化の分類
まず、高血圧性変化と動脈硬化性変化は分ける必要はありません。高血圧の原因として動脈硬化があり、動脈硬化の原因として高血圧があります。 どちらか片方だけが起こるということはなく、必ずセットで起こりますので高血圧性変化も動脈硬化性変化も分ける必要はありません。
「高血圧性変化は何か?」と聞かれたら、「高血圧性変化または動脈硬化性変化は何か?」と思っていただいて構いません。逆に「動脈硬化性変化は何か?」と聞かれても、「高血圧性変化または動脈硬化性変化は何か?と思っていただいて構いません。
でも、Scheie分類では高血圧性変化、動脈硬化性変化を分けているじゃないか?本当に高血圧性変化と動脈硬化性変化を分けなくていいの?と思われる方もいらっしゃるでしょう。
Scheie分類
さて、Scheie分類ですが1953年に誕生しました。大分前ですね。Scheie先生は血管の状態を高血圧性と動脈硬化性に分けましたが、高血圧と動脈硬化はセットで起こるので「分類する必要はないのでは?」と考える医者がでてきました。
Keith-Wagener分類
そのひとが提唱したのがKeith-Wagener分類です。Keith-Wagener分類ではこれらを区別していません。
じゃ、どっちの分類を覚えればいいの?と思いますよね。どっちがいいかはひとによるので、眼科医になったら好きな方を選べばいいです。少なくとも国試に関しては高血圧性変化、動脈硬化性変化を区別する必要はないのであまり気にしない方が賢明です。
区別する必要がないと分かったところで、理解しづらい所見を一つずつ見ていきましょう。
2)高血圧と動脈硬化の眼底所見
血柱反射亢進
血柱とは血管の壁のことです。動脈硬化があると血管の壁が厚くなるので反射も亢進します。どの位なら反射が亢進しているのか難しいので今はあまり気にしないでください。
銅線動脈
動脈硬化が更に進行すると、動脈が銅線のように見えます。これもどの位なら銅線動脈と呼ぶかは難しいので今は気にしないでください。
銀線動脈
銅線動脈が更に進んだのが銀線動脈です。
交叉(こうさ)現象
もちろん動脈と静脈が交叉するだけではありません。そんなの普通の状態です。正常な動脈は柔らかいので静脈がつぶされることはありませんが、動脈硬化が進み、動脈が硬くなると交叉している部位の静脈がつぶされてしまいます。これを交叉現象といいます。
硬性白斑
「硬性白斑は硬い白斑だろっ!!」と覚えても意味がありません。硬性白斑とはそもそも何か?を理解するのが大事です。
硬性白斑とは血管からの浸出液の残りです。正常な状態では浸出液は全て静脈で回収されますが、高血圧があると血管が傷んでいたり、圧が高かったりし余分なものが血管からでてしまいます。 水分はある程度静脈で回収されますが、固形成分は回収されずにその場に残ってしまいます。
固形成分なので見た目に硬い印象があります。色は白っぽいです。だから硬性白斑と言うのです。
軟性白斑
軟性白斑とは神経の浮腫です。神経はもちろん血管からの浸出液で栄養されていますが、余分な浸出液は静脈で回収されます。しかし、交叉現象があったりすると静脈の流れが悪くなり、浸出液を回収することができなくなります。
この結果、神経に余分な水がたまり浮腫を起こします。神経は普通細いのであまり良く見えませんが、浮腫を起こすと太くなり目立つようになります。神経なので柔らかく、白いです。だから軟性白斑と言うのです。
以上で高血圧性変化・動脈硬化性変化についての説明は終わりです。国試レベルだったらこの程度理解すれば大丈夫ではないでしょうか。