コウメイ(@kokusigokaku):読者の方からSIADHについて質問をいただきました。
SIADHで高血圧をきたさないのはなぜですか?水の再吸収が増え、循環血漿量が上昇するために血圧が上がるイメージがあるのですが・・・。
水分は主に細胞内に分布する
まず、SIADHについての簡単な復習です。SIADHとはADHが過剰に分泌されるため、腎の集合管からいつも以上に水分が再吸収される病気です。この水分ですが、Naは含まずに真水というのがポイントです。
真水は腎から吸収された後にどこに分布するでしょうか?
もちろん、まずは血管に行きます。でもずっとそこにとどまっているわけではありません。人間は60%が水分ですが、
- 40%が細胞内
- 15%が間質
- 5%が血管
にあります。真水はこれらに均等に分布します。メインは細胞内で血管は少なめです。よって、血管内のボリュームはあまり増えません。
RAA(レニン、アンギオテンシン、アルドステロン)系が抑制される
とはいうものの、多少は血管内のボリュームは増えます。その結果どうなるかというと、レニンの分泌が抑制されます(SIADHの診断の参考所見のひとつ)。レニンの分泌が抑制されると、アンギオテンシンやアルドステロンの産生が低下します。その結果、血管の収縮があまり起こらず、またNaの再吸収が減ります。
以上の理由からSIADHでは血圧は上がりません。
解説はこれで終わりですが、前述の水分の分布について詳しく知りたい方は拙書「輸液のキホン」をご覧ください。