直腸診とスプーンネイルの確認のどちらが重要か?

最終確認日:2017/07/25 最終更新日:2017/07/25

コウメイ:Yさんより貧血の検査(第106回医師国家試験C21)について質問をいただきました。皆さんは貧血を疑った時皆さんはどんな診察をしますか?まずは問題を見てみましょう。

第106回医師国家試験C21

64歳の女性。2週前から、家庭用血圧計で測定した脈拍が毎分90 回を超えるようになったことを心配して来院した。1週前から、2階まで階段を昇ると息切れを自覚するようになった。食生活に偏りはなく、過去1年の体重は一定しており、便通は5日に1回程度、黒色調であったという。

体温 36.2 ℃。脈拍 96/分、整。血圧 132/72 mmHg。呼吸数 24/分。眼瞼結膜は蒼白である。眼球結膜に黄染を認めない。甲状腺の腫大を認めない。胸骨左縁第3肋間を最強点とするⅡ/Ⅵ度の収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。腹部に腫瘤や圧痛を認めない。

診察する部位で最も重要なのはどれか。

  1. 上肢
  2. 乳 房
  3. 脊 柱
  4. 直 腸
  5. 下肢

 

この問題について以下のような質問をいただきました。

読者からの質問

臨床所見から貧血が読み取れ、に黒色便であることから上部消化管の出血による鉄欠乏性貧血疑いであることは読み取れます。

しかし、診察する部位で最も重要な部位が直腸であることが理解できません。直腸を重要な診察部位と考えるのは血便の場合ではないのでしょうか。私は鉄欠乏性貧血からスプーンネイルを考えて、上肢を重要な診察部位と考えました。回答よろしくお願いします。

 

コウメイ:厚生労働省の発表では正解はdの直腸です。私も上肢よりは直腸がいいかと思います。3つ理由があるので順に説明していきますね。

 

医師が確認することが重要

まず、本当に黒色便かどうか実際に自分の目で確かめることが大切です。患者の言葉はあくまで患者の言葉(Subjective)です。間違った表現をしているかもしれません。きちんと確かめて、医者の言葉(Objective)に置き換える必要があります。

 

方針が変わる?

スプーンネイルが鉄欠乏性貧血の方の何%にでるか知っていますか?

 

学生B:100%じゃないんですか?

 

コウメイ:約25%です。まず、これを覚えておいてください。診察や検査を行うからにはその後の方針が変わらないといけません。この患者はスプーンネイルの有無でその後の方針が変わるでしょうか?

スプーンネイルがあった場合

上部消化管出血が原因で鉄欠乏性貧血になってそうだ
⇒スプーンネイルがあった!!
⇒やはり鉄欠乏性貧血の可能性があるな
⇒上部内視鏡で出血源を確認しよう

◎スプーンネイルがない場合

上部消化管出血が原因で鉄欠乏性貧血になってそうだ
⇒スプーンネイルがない
⇒まぁ、鉄欠乏性貧血の25%にしかでないから鉄欠乏性貧血は否定できないぞ
⇒上部内視鏡で出血源を確認しよう

以上から分かるようにスプーンネイルがあってもなくても方針が変わりません。

 

その他疾患の除外

この患者は出血がありそうです。そして、Yさんが考えたように出血源は上部消化管の可能性が高いです。では、出血源は上部消化管だけでしょうか?直腸癌や痔はないでしょうか?合併している可能性も十分にあります。

それを視診や直腸診で確かめる必要があります。特に直腸癌があった場合、治療が変わってくるのできちんと有無を確認することは大切です。以上の理由から上肢よりは直腸の方が重要と考えました。

ただ、医学には絶対的な正解はありません。Yさんのようにきちんと考えて自分なりの答えを出すというのは非常に大切です。今後もその調子で勉強を続けていってもらいたいです。今回の講義は終わりです。お疲れ様でした(^_^)