肺胞蛋白症の蛋白の正体 〜サーファクタントと肺胞マクロファージ〜【105I63】

コウメイ:なぜ肺胞蛋白症では肺胞に蛋白がたまるのでしょうか?今回はそのメカニズムについて説明していきます。まずは問題を見てみましょう。

医師国家試験105I63

60歳の女性。1か月前からの労作時の息切れを主訴に来院した。6か月前から咳嗽を自覚していた。体温36.7℃。呼吸数20/分。脈拍92/分、整。血圧138/76mmHg。聴診で両側下肺野にfine cracklesを聴取する。血液所見:赤血球420万、Hb 14.2g/dL、Ht 42%、白血球5,800、血小板28万。免疫学所見:CRP 0.3mg/dL、CEA 2.3ng/mL(基準5以下)。血液生化学検査に異常を認めない。胸部エックス線写真(A)、胸部CT(B)及び気管支肺胞洗浄液の写真(C)を別に示す。

医師国家試験105I63_画像A_肺胞蛋白症の胸部レントゲン写真
A
医師国家試験105I63_画像B_肺胞蛋白症の胸部CT写真
B
医師国家試験105I63_画像C_肺胞蛋白症の気管支肺胞洗浄液の写真
C

治療として適切なのはどれか。

a 利尿薬の投与
b 抗癌化学療法
c ペンタミジンの投与
d 全身麻酔下での全肺洗浄
e ニューキノロン系抗菌薬の投与

肺胞洗浄はかなり苦しいので全身麻酔下で行います。ところでなぜ肺胞に蛋白がたまるか知っていますか?

目次

1)肺胞にたまる蛋白はサーファクタント

蛋白の正体はサーファクトです。肺胞がつぶれてしまうのを防ぐ重要な物質です。Ⅱ型肺胞上皮から産生され、肺胞マクロファージで処理されます。本症では肺胞マクロファージの分化がうまくいかないため処理しきれず、サーファクタントがたまってしまうのです。

2)GM-CSFに対する抗体

肺胞マクロファージは単球にGM-CSFという物質が作用することで分化するのですが、本症ではこのGM-CSFに対する抗体ができてしまうのです。

ということは、GM-CSFを投与すれば治療できそうですね。海外ではGM-CSFが治療に用いられています。ただ、日本では未承認です。

※未承認なので国試にはでないと思います。

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