重症筋無力症で前脛骨筋の筋力低下は起こるのか? 〜良い解説とダメな解説〜

コウメイ(@kokusigokaku):重症筋無力症について質問をいただいたので回答します。

読者からの質問

CBTの問題集で、次の選択肢から重症筋無力症において見られる可能性が高い症状を選ばせる問題がありました。

  1. 項部硬直
  2. 手袋靴下型感覚障害
  3. 外眼筋の筋力低下
  4. 前脛骨筋の筋力低下
  5. 安静時振戦

正解はcですが、私はdもあり得るのではないかと思いました。dの解説には「末梢神経障害で見られる」とのみ書いてありました。私はdの解説は間違っていて、本当は病状が進行したら見られるものの、まだ初期だから見られないのかと予想しています。この是非と理由について教えていただけますでしょうか。

 

基本的には質問者の考えで合っていると思います。その他注意点も含め詳しく解説していきますね。

重症筋無力症では外眼筋と四肢近位筋で筋力低下が起こりやすい

重症筋無力症は筋力低下が起こる病気ですが、全ての筋の筋力が一様に低下するわけではありません。

特に外眼筋四肢近位筋の筋力低下が起こりやすいと言われています。なぜこの部分が起こりやすいかは分かりません。ですので、あまり気にしないのがよいです。

私はいつも「丸暗記はダメで病態を理解しよう」と言っていますが、前提として病態が分かっているものに限ります。教科書に病態が書かれていないものはおそらくよく分かっていないものですので、あまり深く気にし過ぎないのも大切です。

気になってgoogleなどで調べるとあっという間に1時間や2時間が過ぎてしまいます。で、結局良くわからなかったという事態に陥りますのでほどほどにしましょう。何でもバランスが大切です。

忘れにくくするために自分で機序を考えてみる

先程「深く気にし過ぎないのも大切」と言いましたが、丸暗記も覚えにくいですよね。ですので、自分なりに機序を考えてみるのは暗記する上でひとつの手です。例えば、私なら以下のように考えました。

重症筋無力症は筋を反復刺激すると筋力低下が起こる(warning)
→よく使う筋が筋力低下しやすい
→よく使う筋と言えば、外眼筋、眼瞼、四肢の近位筋

※常に眼は動いていますよね。まばたきも常にしていますよ。歩く時、よく動かすのは足関節よりも膝関節です。つまり、大腿四頭筋などの近位筋をよく使っていることになります。

これなら覚えやすくなると思います。

重症筋無力症で前脛骨筋はどうなる?

重症筋無力症で前脛骨筋は筋力低下が起こらないかは私には分かりません。ハリソンには「(病気が進行すれば)約85%の患者では筋力低下が全身に広がり、四肢筋も侵される」と書いてあるので病気が進行すれば前脛骨筋の筋力低下も起こるかもしれません。

ただ、重症筋無力症で前脛骨筋がどうなるかとの詳細な記載は見たことがありませんので、おそらくあまり筋力低下は目立たないのでしょう。少なくとも「重症筋無力症で見られる可能性が高い症状」には当てはまることはないでしょう。

まとめると「重症筋無力症では前脛骨筋の筋力低下は起こる可能性はあるが、可能性は低い。だから正解肢にはならない。」となります。

「末梢神経障害で見られる」はダメな解説

問題集の解説には「末梢神経障害で見られる」と書いてあったそうですが、それはダメな解説です。

ある症状aが疾患Bで見られることは、ある症状aが疾患Aで見られないことの説明にはなりません。例えば、「脳出血で麻痺が見られるか?」という問題があったとしましょう。このとき、「麻痺は脳梗塞で見られる。だから脳出血では見られない。」とはならないですよね。

今回の問題で「末梢神経障害で見られる」と書いてあるのは不適切です。正しくは「重症筋無力症では前脛骨筋の筋力低下は見られるかもしれないが、おそらく頻度は少ない。なお、末梢神経障害では前脛骨筋の筋力低下が見られやすい。」となります。

結構、不適切な説明が書いてある解説書がありますので注意してください。