肝性脳症で血中の胆汁酸が増える理由【87A56】

コウメイ:読者の方から肝性脳症について質問をいただきました。まずは質問の元になった問題を見てみましょう。

医師国家試験87A56

肝性脳症で血中に増加するのはどれか。2つ選べ

a 胆汁酸
b メルカプタン
c コリンエステラーゼ
d フィブリノゲン
e ロイシン

この問題に対し以下のような疑問を持ったようです。

読者からの質問

肝性脳症では肝機能不全状態なので、胆汁酸の合成が低下し、血中胆汁酸は低下すると思いました。そもそも、閉塞性障害もないのに消化管に分泌される胆汁酸が血中で増加するのでしょうか?

なるほど。一見すると質問者の方の仰る通りですね。それでは、なぜ質問者の方の考えた通りにならないか説明していきますね。 

目次

1)肝機能とは?

肝性脳症は肝機能低下によって起こる病気ですが、そもそも肝機能とは何でしょうか? 肝機能と一口で言っても実際は色々な働きがあります。例えば

  • 胆汁酸の生成
  • 蛋白の合成
  • 脂質代謝
  • 糖のコントロール
  • 解毒

などなど。今回はこの胆汁酸の生成について詳しく説明していきます。

2)胆汁酸の生成~どこからどこへ?~

胆汁酸は肝細胞でコレステロールから作られます。この後が重要です。肝細胞で作られた胆汁酸は毛細胆管を経て、胆管へ行くわけなんですが・・

毛細胆管

毛細胆管には胆汁酸がたっぷりあるので、普通に考えると濃度の関係から肝細胞から毛細胆管には胆汁酸が流れないはずです。それなのになぜ流れるのか?能動輸送です。

肝細胞はエネルギーを使って胆汁酸を毛細胆管に輸送しているんです。肝機能が低下すると、確かに胆汁酸の生成も落ちますが、それより胆汁酸を毛細胆管へ輸送する働きの方がおちてしまうのです。

その結果、肝細胞内の胆汁酸の濃度が上がり、胆汁酸の濃度の低い血中へと漏れてしまいます。このような理由で胆管の閉塞がなくても、血中の胆汁酸の濃度が上がるというわけです。

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