コウメイ:読者の方からALSの検査について質問をいただきました。まずは質問の元になった問題を見てみましょう。
67歳の男性。両側上肢に力が入らないことを主訴に来院した。半年前から両側上肢の脱力が進行性に増悪した。舌の萎縮・線維束攣縮と両側上肢の筋萎縮・筋力低下・深部腱反射減弱とを認める。下肢の深部腱反射は亢進し、両側のBabinski徴候が陽性。感覚障害や排尿障害を認めない。
診断的意義が最も高い検査はどれか。
a 筋生検
b 針筋電図
c 呼吸機能
d 脳脊髄液
e 神経伝導速度
この問題に対し以下のような質問を持ったようです。
ALSの診断を問う問題ということはわかるのですが、b(針筋電図)かe(神経伝導速度)で迷ってしまいます。ネット講座の解説書によると
b(針筋電図):正しい。神経原性変化をみる。
e(神経伝導速度): 神経電動速度は保たれることが多い。診断的意義はない。
となっております。確かに、b(針筋電図)が正解なのはわかるのですが、本症例のような臨床経過の人にe(神経伝導速度)を行って(下位運動ニューロン障害があるにもかかわらず)正常ならALSらしいと判断できる気がします。私の考えはダメでしょうか?
1)b(針筋電図)とe(神経伝導速度)でより良いのはどちらか?
ご指摘の通りで、e(神経伝導速度)を行ってもある程度病気を絞り込むことができます。e(神経伝導速度)に診断的価値がないというわけではありません。
重要なのはb(針筋電図)とe(神経伝導速度)のどちらがより良いかということです。
b(針筋電図)はALSの本質についての検査であり、e(神経伝導速度)より診断的意義が高いです。
2)診断的意義が高い:正常な人とは異なる結果になる
もっと分かりやすい表現をすると、医師国家試験における診断的意義が高いとは、正常な人とは異なる結果になるもののことです。
b(針筋電図)は正常な人では特に変化は起こりませんが、ALSでは線維束性収縮電位やMUPの振幅の増大を認めます。
e(神経伝導速度)は正常でもALSでも変わりありません。
よって、b(針筋電図)の方が診断的意義が高いとなります。