急性心筋梗塞疑いの患者に運動負荷心電図は禁忌 〜トロポニンTを測定する〜【107C27】

コウメイ:今回は心筋梗塞について勉強していきます。心筋梗塞を疑ったらどんな検査をしますか?まずは問題を見てみましょう。

医師国家試験107C27

56歳の男性。胸痛を主訴に来院した。
現病歴:2時間前にテレビを見ていたとき突然、前胸部の締めつけられるような痛みを感じた。痛みは約15分続いた後いったん消失した。1時間前から再び出現したため家族の運転する自家用車で来院した。来院時には胸痛は消失していた。
既往歴:51歳時に健康診断で高血圧を指摘されたが治療は受けていない。
家族歴:特記すべきことはない。
現 症:身長162cm、体重85kg。体温36.6℃。脈拍88/分、整。血圧162/102mmHg。呼吸数16/分。SpO2 97%(room air)。皮膚は湿潤である。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。甲状腺と頸部リンパ節とを触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。橈骨動脈の触知は良好で左右差を認めない。足背動脈の触知は良好で左右差を認めない。下腿浮腫を認めない。
検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)、ケトン体(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球460万、Hb 13.0g/dL、Ht 42%、白血球8,400、血小板21万。血液生化学所見:血糖138mg/dL、HbA1c 5.4%(基準4.6~6.2)、総蛋白7.4g/dL、アルブミン3.9g/dL、尿素窒素11mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、尿酸7.5mg/dL、総コレステロール223mg/dL、トリグリセリド256mg/dL、総ビリルビン0.8mg/dL、直接ビリルビン0.3mg/dL、AST 22U/L、ALT 14U/L、LD 172U/L(基準176~353)、ALP 225U/L(基準115~359)、γ-GTP 36U/L(基準8~50)、アミラーゼ48U/L(基準37~160)、CK 138U/L(基準30~140)、Na 144mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 105mEq/L、Ca 9.9mg/dL、P 3.3mg/dL。12誘導心電図は洞調律で有意なST-T変化を認めない。胸部エックス線写真は心胸郭比46%で肺うっ血を認めない。心エコーでは壁肥厚、壁運動低下および右心負荷所見を認めない。

現時点で、他に実施すべき検査はどれか。

a 運動負荷心電図
b 胸部単純CT
c 呼吸機能検査
d 心筋トロポニンT測定
e 脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉測定

目次

1)心筋梗塞疑いに運動負荷心電図はダメ!!

病歴からすると急性心筋梗塞っぽいですよね。でも検査でははっきりしない。そんなときどうするればよいでしょうか?

「運動負荷心電図です。ST上昇すれば心筋梗塞と診断できます」

というのはダメです。心筋梗塞の可能性のある人に運動負荷をさせてはいけません。勘違いしている方もいるかもしれませんが、運動負荷心電図は安定狭心症かどうかを調べるためのものです。「心筋梗塞」ではありません。

2)心筋梗塞疑いにはトロポニンT検査をする

心筋梗塞かどうか判断するには心筋トロポニンT検査が良いです。血液中に心筋トロポニンTが含まれるかを検査します。血液を少し垂らすだけです。15分程度で結果がでます。

トロポニンT

「でも、CKもLDも心電図も正常だし、心筋梗塞ではないと思います。」

と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

ここで皆さんに覚えていてもらいたいのですが、CK、LD、心電図が正常だからといって心筋梗塞を否定できるわけではありません。CK、LD、心電図は発症数時間がたってから異常となるので、直後(1時間とか2時間)は何とも言えません。

そんなときのためにトロポニンTがあります。トロポニンTは比較的早くから異常値(陽性)がでますので早期診断に役に立ちます。

※トロポニンTが陰性だからといって完全に心筋梗塞を否定できるものではありません。

皆さんも研修医になり救急外来を担当するようになると絶対にこのような症例に遭遇しますので、トロポニンTを忘れずに測定するようお願いいたします。

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