※本記事は連載「これだけ心電図」の一部です。こちらが目次へのリンクになりますので一番初めから読むことをお勧めします。
コウメイ:今回は心房細動について説明していきます。いつも通り、病態から見ていきましょう。
1)心房細動の病態
正常なら心臓を収縮させる命令は洞結節から出ますが、心房細動は心房の至るところから出ています。
至る所から命令がでるので、ペースは早く、不規則なものとなっています。その結果、心房は速いペースで収縮しています。収縮というよりは、細かく震えていると言った方が、近いかもしれません。
心房から出た命令は正常な命令と同じで、まずは房室結節に行き、ヒス束 → 右脚・左脚→ プルキンエ線維→ 心室へと伝わります。ただし、正常とは異なる点が2つあります。
2) 房室結節は全ての命令を伝えるわけではない
心房細動は心房の至るところから命令が出ますので、全てを合計すると1分間に300回以上になります。この命令が房室結節に行くのですが、房室結節は処理能力が遅いので、命令全てをヒス束に伝えるわけではありません。
心房の命令2個中1個とか、3個中1個とかをヒス束に伝えます。ヒス束に伝わった命令は全て右脚・左脚以降に伝わります。
3) 命令のペースは不規則
心房から出ている命令は不規則なので、当然心室に伝わった命令も不規則です。その結果、心室は不規則に収縮し、脈は不整となります。
4)心房細動の心電図所見
以上の病態からどのような心電図になるか考えてみましょう。
心房は細かく震えているだけなので、正常なP波は見られません。その変わり、f波と言う小さな波が見られることがあります。
また、先程説明したように、心室は不規則に収縮しているので、QRS波は不規則に見られます。RR間隔が不規則と言うこともできます。
心室への命令は「刺激伝導系」という命令専用の経路を通ってくるので、QRS幅は狭くなります。
まとめると下記のようになりますが、これは丸暗記するものではなく病態から自分で考えるものです。
- f波
- RR間隔が不規則
- QRS幅が狭い
病態からきちんと考えると忘れにくいし、仮に忘れたとしても自分で導き出すことができます。病態から心電図を考えることはメリットが大きいので、今後も病態をメインに心電図を勉強していきましょう。
次回は心房粗動について説明します。