コウメイ(@kokusigokaku):今回は子宮腺筋症と子宮筋腫との見分け方について解説していきます。まずは国試の過去問を2題見てみましょう。
32歳の女性。月経痛と不妊とを主訴に来院した。3年前に結婚。以前から過多月経があり、健康診断で貧血を指摘されている。月経痛は著明で、非ステロイド性抗炎症薬を服用しても痛みが軽減しない。
身長 162cm、体重 50kg。尿所見:蛋白(-)、糖(-)
血液所見:赤血球 324万、Hb 8.4g/dl、Ht 28%、白血球 6000、血小板 18万。
骨盤部単純MRI矢状断のT1強調像とT2強調像とを別に示す。
答え(クリック)
子宮腺筋症
40歳の女性。以前から過多月経があり、人間ドックで小球性低色素性貧血を指摘され来院した。便潜血反応陰性。子宮頸部細胞診クラスII。
骨盤部単純MRIのT2強調矢状断像を以下に示す。
答え(クリック)
子宮筋腫
画像所見は病態から自分で考える
問題集にはMRI所見について以下のように書いてあることが多いです。
- 子宮腺筋症:MRIのT2で境界不明瞭。
- 子宮筋腫:MRIのT2で境界明瞭。
これを丸暗記してもすぐ忘れます。おそらく1週間後にはどっちが境界明瞭でどっちが境界不明瞭か忘れてしまうでしょう。病態を理解すると自分でMRI所見を考えることができ忘れにくく、仮に忘れたとしてもすぐに思い出すことができます。
病態から考える子宮腺筋症のMRI所見
まずは子宮腺筋症から考えてみましょう。MRIで見られる腫大した部分は何か分かりますか?
子宮内膜ではありません。
実は異所性の子宮内膜ではなく、異所性の子宮内膜によって反応性に腫大した筋肉です。反応性に腫大しているだけなので境界不明瞭となります。
では、異所性の子宮内膜はどこにいったのでしょうか?白い小さな点々がそうです。異所性ですが子宮内膜です。生理の時は出血します。その出血が白く写るのです。以上をふまえた上でMRIをご覧ください。
もう忘れることはないですね。
病態から考える子宮筋腫のMRI所見
次に子宮筋腫について考えて見ましょう。子宮筋腫はその名の通り、筋肉の腫瘍です。周りの筋肉とは別物です。だからMRIで境界明瞭になります。月経による出血はないので白い点々はありません。
子宮腺筋症と子宮筋腫の主訴の違い
上記の画像は分かりやすかったですが、中には分かりにくいものもあります。画像だけではなく病歴も重視するようにしましょう。実はこちらの方が簡単に見分けることができます。
子宮腺筋症の主訴
異所性の子宮内膜が病気の本体です。子宮内膜なので月経痛が特徴です。101G60では月経痛は著明で、非ステロイド性抗炎症薬を服用しても痛みが軽減しないと表現されています。
子宮筋腫の主訴
正常な筋肉は一定の方向にならんでいますが子宮筋腫の筋肉はバラバラです(錯綜配列)。通常は月経のとき子宮が収縮することで血管が圧迫され出血が止まりますが、子宮筋腫では錯綜配列のためうまく収縮できません。
その結果、なかなか出血が止まらず過多月経を起こします。痛みよりは過多月経がメインです。102D60では特に痛みの記載はありません。
これで子宮腺筋症と子宮筋腫との見分け方は終わりです。MRI画像の見方、主訴の重要性について理解できたかと思います。