鉄芽球性貧血とサラセミアで血清鉄が上がる理由 〜ヘプシジン、フェロポーティン、GDF15〜

コウメイ:鉄芽球性貧血とサラセミアで血清鉄が上がる理由について質問をいただきました。

読者からの質問

鉄芽球性貧血とサラセミアでの血清鉄が高値になる理由について質問です。血管内溶血では溶血で漏れ出た鉄が腎から排泄されるので、正常より鉄が低値になると習いました。

鉄芽球性貧血とサラセミアは骨髄内で血球が破壊されますが、これらも血管内溶血と同様に鉄が低値となる気がします。なぜ血清鉄が高値になるのでしょうか?

目次

1)鉄の細胞内外の移動

まずは鉄の移動について理解する必要があります。

血清鉄が多い場合は細胞内(主にマクロファージ)に鉄が移動し、血清鉄が少ない場合は細胞内(主にマクロファージ)から血液中に鉄が移動します。

また、マクロファージが寿命となった赤血球を貪食することで細胞内に鉄が蓄えられます。

2)細胞内から細胞外へはフェロポーティンが関与する

細胞内から細胞外への鉄の移動は、細胞膜にあるフェロポーティンを介して行われます。また、鉄は消化管から血液中に移動しますすが、この際もフェロポーティンを介して行われます。

鉄とフェロポーティン

3)フェロポーティンとヘプシジン

フェロポーティンは肝で産生されるヘプシジンという物質で抑制されます。

※ヘプシジンがフェロポーティンに結合すると、エンドサイトーシスにより細胞内に移動し、ライソゾームで分解されます。

4)ヘプシジンとGDF15

肝で産生されるヘプシジンは骨髄で産生されるgrowth differentiation factor 15(GDF15)で抑制されます(亢進ではなく抑制です)。詳細は不明ですが、鉄芽球性貧血とサラセミアではGDF15の産生が亢進します。

5)まとめ

まとめると以下のようになります。

① 鉄芽球性貧血とサラセミアでは骨髄でGDF15の産生が亢進
② GDF15が肝でのヘプシジン産生を抑制する
③ フェロポーティンが抑制されず、細胞内や消化管から血液中に移動する鉄が増える

※鉄芽球性貧血とサラセミアではGDF15の産生が亢進する詳細は不明ですが、これ以上は深入りしないのが懸命かと思います。

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