高カルシウ血症の症状 〜カルシウムの神経への作用〜

コウメイ:読者の方から高カルシウムの症状について質問をいただきました。

読者からの質問

高カルシウム血症の症状、心電図がなかなか理解できません。なぜ、以下の症状がおきるんですか。

精神・神経症状:錯乱、昏迷、昏睡、イライラ感、うつ傾向
消化器:食欲不振、悪心・嘔吐、便秘、膵炎、消化性潰瘍、腹部膨満
心血管:徐脈、房室ブロック、QT短縮
筋:筋力低下、筋痛

※消化性潰瘍は高カルシウム血症が胃酸分泌を促進するためとありました。
※急性膵炎は高カルシウム血症が膵液の分泌を亢進するためとありました。

目次

1)カルシウムは神経の興奮を抑制する

神経が興奮することを脱分極と言いますが、脱分極するときはナトリウムがナトリウムチャネルを通って細胞の中に流入します。このナトリウムチャネルは周りにカルシウムが多いとナトリウムを通しにくいという性質があります。高カルシウム血症では細胞内にあまりナトリウムが入らず、脱分極が起こりにくくなります。よって、神経はあまり興奮しなくなります。

その結果、錯乱、昏迷、昏睡、うつ傾向が起こります。イライラは神経が興奮していそうですが、神経がきちんと興奮せず、情緒不安定な状態と理解すると覚えやすいでしょう。

神経が興奮しないということは筋肉も動きません。もちろん消化管の筋肉もあまり動きません。その結果、食欲不振、悪心・嘔吐、便秘、腹部膨満などの症状が表れます。

徐脈や房室ブロックも神経が興奮しないからという理由でいいと思います。

2)高カルシウム血症でQT時間短縮になる理由

QT時間は簡単に言えば心室が興奮している時間です。心室が興奮するには、まず細胞内へのナトリウムの流入が、その後細胞内へのカルシウムの流入が必要です。周りにカルシウムが多いと細胞内へ一気に流入するため心室がいつもより早く興奮することができます。その結果QT時間は短縮します。

※先ほど高カルシウム血症ではナトリウムの流入は遅れると説明しました。この点から考えるとQT時間は延長しそうです。ただし、ナトリウムの流入時間はカルシウムの流入時間に比べるともともと短いです。よって、カルシウムの流入時間の影響が大きくなり、全体としてQT時間は短縮します。

3)胃酸、膵液の分泌亢進

高カルシウム血症ではG細胞のカルシウム受容体が刺激されガストリンの分泌が促進します。その結果、胃酸分泌が高まり胃潰瘍が起こりやすくなります。

高カルシウム血症が急性膵炎を起こす機序はおそらく詳しくは分かっていないと思いますので、あまり気にしすぎないのが懸命です。

以上で説明は終わりです。

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