脊髄くも膜下麻酔(脊椎麻酔)で低血圧になる機序と対処法

最終確認日:2017/08/09 最終更新日:2017/08/09

コウメイ:読者の方より「脊髄くも膜下麻酔における低血圧への対応」について質問をいただきました。まずは質問を見てみましょう。

読者からの質問

質問者:医師国家試験の過去問について質問です。

【第103回医師国家試験G38】
帝王切開術に際して、脊髄くも膜下麻酔を施行したところ低血圧を生じた。対応として正しいものを2つ選べ。

  1. 半坐位にする
  2. エフェドリン静注
  3. オキシトシン静注
  4. 乳酸リンゲル輸液
  5. 重炭酸ナトリウム静注

正解:b、d

質問者:aの半坐位はなぜ正解ではないのでしょうか? 低血圧では下肢拳上をしますが、その際麻酔薬が高位に流れるのを防ぐため半座位にする必要があると思いました。

 

なぜ脊髄くも膜下麻酔で低血圧になるのか?

まずはなぜ脊髄くも膜下麻酔で低血圧になるか考えてみましょう。

それは交感神経が遮断されるためです。交感神経は血管にも分布しており、血管を収縮させる作用があります。麻酔をすると交感神経が遮断され、血管が拡張するため血圧が低下します。

それでは血圧が下がったらどうすればよいのでしょうか?

血圧=心拍出量×末梢血管抵抗ですので、心拍出量と末梢血管抵抗を増やせばよいです。心拍出量を増やすために輸液を、末梢血管抵抗を増やすためにエフェドリンを使用します。問題の選択肢ではb、dです。

 

エフェドリンとは?

β刺激薬のひとつです。β刺激薬なので血管を収縮させ血圧を上げる作用があります。学生のうちはあまり馴染みがないかもしれませんが、超有名な薬なので覚えておきましょう。

 

学生B:エフェドリンが超有名な薬なのは分かりました。でも、β刺激薬ってそれ以外にもたくさんありますよね。一体、いくつ覚えればいいんですか?

 

コウメイ:国試を控えた学生にとってはそれが気になるところですよね。確かにβ刺激薬は色々ありますが、麻酔時に血圧を上げる目的で使用されるのはエフェドリン位なのでこれを覚えれば大丈夫です。研修医になり麻酔科を回ったら絶対に使う薬なので覚えておきましょう。

記憶に残るようにもう少し具体的に説明していきます。

 

エフェドリンの使い方

「血圧を上げるにはエフェドリンを使う。」これだけ知っていても意味がないので実際の使い方を見ていきましょう。これが実物です。

エフェドリン

 

1アンプルに1mL入っています。エフェドリン自体は40mgです。

これを1mLの注射器にとって全て入れるようなことはしてはいけません

 

エフェドリンの正しい使い方

1mLの注射器ではなく10mLの注射器にとります。もちろん、10mLの注射器にとって、それを全て入れるのでは先程と変わりません。

10mLの注射器にとったら、生食を入れて合計8mLか10mLにします。そして、1mLか2mLずつ三方活栓の側管から入れます。

三方活栓の側管

 

エフェドリンを8mLにする理由

合計10mLにするのは納得できると思いますが、なぜ8mLにするのでしょうか?それは8mLにすると1mLにつきエフェドリン5mgになりキリがいいからです。先程も説明しましたが、エフェドリンは1mLで40mgの状態で販売されています。それを生食7mLで薄めて合計8mLにすると1mLで5mgになるわけです。

8mLがいいか、10mLがいいかは人によるので、研修医になって実際に使用する場合は指導医と相談するのがいいと思います。

エフェドリンについてはこれで説明は終わりです。もう忘れることはないでしょう。次に、「なぜ半座位が正解ではないか」について説明していきます。

※半座位とはこのような体位です。

半座位

 

なぜ半座位がダメか?

質問者は血圧を上げるために下肢挙上が必要だと考え、それによって麻酔が上にいくのを防ぐために半座位も必要だと考えたようですね。自分で色々と考えておりいいと思います。

しかし、半座位にはしません。その理由は簡単です。それは、半座位にしてしまうと心臓に血液が行かなくなるからです。下肢を挙上して、半座位にしてしまうと重力の関係で、お尻に血液が溜まってしまいます。

低血圧で半座位

 

これでは意味がありませんので半座位にはしません。

しかし、色々と自分で考えたのはとてもいいことだと思います。今後もきちんと自分で考える勉強をしていただければと思います。今回は以上で終わりです。お疲れ様でした(^_^)

 

【追記】

読者の方よりエフェドリンについて質問をいただき、さらに詳しく解説しました。
エフェドリンの作用についての詳細