アナフィラキシーショックで心拍出量が上がらない理由【102E29】

コウメイ(@kokusigokaku):読者の方から「アナフィラキシーショック」について質問をいただきました。病態を理解する上で非常によい内容です。まずは質問の元になった医師国家試験の問題を見てみましょう。

第102回医師国家試験E29

血圧は低下し、皮膚は温かく紅潮している。心拍出量は増加し、末梢血管抵抗は低下している。この病態に当てはまるのはどれか。

  1. 出血性ショック
  2. 心原性ショック
  3. 敗血症性ショック
  4. 神経原性ショック
  5. アナフィラキシーショック
答え(クリック)

 

読者からの質問

a、bが明らかに違うのはわかりますが、eも正解のような気がします。どちらも末梢血管が拡張して暖かくなり、代償で心拍出量が増えそうな気がします。

また、dの神経原性ショックもよく分かりません。脊損などで交感神経系の急激な低下によりおこるというのが理解出来ません。脊損なら交感神経も副交感神経も両方障害されそうです。

 

アナフィラキシーは短時間で進行し、短時間で治療するため病態を把握するのが難しく、あまり教科書に説明がありません。心拍出量についてはっきり書いてあるのはありませんが、おそらく下記の説明で合っていると思います。

心拍出量は静脈還流量と心収縮力で決まる

血圧 = 心拍出量×末梢血管抵抗であり、心拍出量は静脈還流量と心収縮力で決定されます。以上を頭に入れた上で、敗血症とアナフィラキシーとで心拍出量がどのようになるか考えてみましょう。

敗血症で心拍出量はどうなるのか?

敗血症のメインの病態は末梢血管の拡張です。末梢血管が拡張すると末梢血管抵抗が下がるのでそのままでは血圧は低下してしまいます。それを防ぐために心拍出量は増大します。

アナフィラキシーで心拍出量はどうなるのか?

次にアナフィラキシーについて考えてみましょう。アナフィラキシーはヒスタミンなど様々な化学物質が関与するとされます。その結果、末梢血管は拡張します。また、血管透過性が亢進し間質へ水分が漏れます。さらに、冠動脈の攣縮などの原因で心収縮力は低下します。

よって、末梢血管抵抗が下がり血圧が下がるので心収縮力を上げたいが、心臓自体も影響を受けているので心拍出量を上げることができません。血管透過性更新による静脈還流量の低下も影響しています。

脊損で傷害される神経は?

次に神経原性ショックについて考えてみましょう。心臓に分布する交感神経と副交感神経の走行を確認してみてください。
※心臓に分布する副交感神経は迷走神経です。

◎交感神経

視床下部⇒脊髄⇒脊髄管⇒心臓

◎副交感神経

視床下部⇒延髄⇒心臓

※簡単にまとめましたが、アトラスで自分で確認してください。こういう小さい確認の積み重ねが今後の伸びに大きく影響します。

上記から分かるように心臓に分布する副交感神経は脊髄を通りません。ですので、脊髄が傷害されても副交感神経は傷害されません。その結果、副交感神経優位になりショックになってしまうのです。