コウメイ:拙書『レジデントのためのこれだけ輸液』に質問をいただいたので回答します。
電解質異常の高カリウム血症で質問です。よく代謝性アシドーシスで高カリウム血症になると言われますが、自分が持っている本には呼吸性アシドーシスについて言及されているものはありませんでした。
『レジデントのためのこれだけ輸液』では、高カリウム血症の原因に呼吸性アシドーシスが挙げられています。参考文献などがあれば教えていただいてよろしいでしょうか?
1)参考文献(血清カリウムと呼吸性アシドーシスとの関係)
アクセスしやすいものとして2つご紹介します。
J Am Soc Nephrol. 2011 Nov; 22(11): 1981–1989.
The directional effects of acidemia and alkalemia on K+ redistribution are similar in respiratory acid-base disturbances as in metabolic derangements, but the effects of respiratory disorders on K+ redistribution tend to be smaller than metabolic acid-base disturbances.
日本語訳:アシデミアとアルカレミアのK+再分布に対する影響は、呼吸性酸塩基障害と代謝性酸塩基障害とで類似しているが、呼吸性酸塩基障害のK+再分布に対する影響は代謝性酸塩基障害よりも小さい傾向がある。
Respiratory acidosis causes a small rise in serum potassium levels.
日本語訳:呼吸器アシドーシスでは、血清カリウム値がわずかに上昇する。
2)補足
高カリウム血症と呼吸性アシドーシスについて
参考文献の記載から分かるように、呼吸性アシドーシスが血清カリウムに与える影響は少ないです。よって、高カリウム血症を呈する患者に呼吸性アシドーシスがあったとしても、他にも高カリウム血症になる原因がないか鑑別を進めるのがよいです。
『レジデントのためのこれだけ輸液』で呼吸性アシドーシスを記載した理由
質問者のご指摘のように、高カリウム血症の原因として代謝性アシドーシスのみを記載している参考書がほとんどです。読者は次のように疑問に思うでしょう。
「呼吸性アシドーシスについては何も記載がないけど、高カリウム血症の原因にはならないってこと?」
もし原因にならないと考えているのであれば、「原因にならない」とはっきり記載すべきと考えます。
拙著ではその点をはっきりさせるため、呼吸性アシドーシスについて言及するすることにしました。ただし、前述したように代謝性アシドーシスと呼吸性アシドーシスとでは血清カリウムに与える影響は異なるので、その点を補足できればよりよかったと考えています。紙面の都合もありますが、今後検討したいと思います。
以上で回答は終わりです。ご質問ありがとうございました。