コウメイ:読者の方から「見当識のヒトとは何ですか?」との質問をいただきましたので解説していきます。学生のうちはあまり気にしないかもしれませんが、働くようになると大事になってきますので一緒に考えてみましょう。
学内試験について質問です。
【問題】60歳男性 物忘れを主訴に来院。診察時に意識は清明だが、生活史に関する質問で想起できなかったり誤りが目立つ(一部略)。
患者の意識レベルをJCSで判定する問いかけとして適切でないのはどれか。
a 私が誰かわかりますか。
b あなた自身誰かわかりますか。
c 生年月日を教えてください。
d お名前を教えてください。
e 今日は何年何月何日ですか。
【正解】b
この問題において「見当識のヒト」についての考え方がよく分からなくて仲間内でも解決できませんでした。実習の時に先生方が付き添いの方の名前を聞いたりしているのは見たことがあるのですが、aやbのような選択肢になるとどう考えればいいのか分からなくなってしまいます。
1)JCSの復習
まず、JCSの復習です。
0:意識清明
1:見当識は保たれているが意識清明ではない
2:見当識障害がある
3:自分の名前・生年月日が言えない
JCS1とJCS2では「見当識」という言葉がでてきますが、これは何を表すのでしょうか?見当識とは具体的に言うと
- 時:今はいつか?
- 場所:ここはどこか?
- ヒト:周りにいるひとは誰か?
です。「時」と「場所」について疑問を持つ人はあまりいないと思うので「ヒト」について説明していきます。
2)ヒト:周りにいるひとは誰か?
質問する場合、当然、医者か看護師が患者に質問するわけですが、「私が誰かわかりますか。」と質問してどのような答えが返ってくるでしょうか?
患者は医師の名前なんて知りませんので、「◯◯先生です」なんて答える患者はいません。「医者です」とか「看護師です」とか答えればOKです。また、付き添いの方の名前を言ってもらうのもいいと思います。
念のために説明しますが、この「ヒト」は患者自身のことではありません。自分のことが言えない場合JCS3になります。
選択肢bの「あなた自身誰かわかりますか?」がなぜ間違いかですが、返答に迷うからだと思います。もしあたなが、いきなり医者に「あなた自身誰かわかりますか?」と聞かれたら何て答えますか?
私なら「何て答えればいいのだろう?」と思いながら考えこんでしまいます。こんな紛らわしい質問ではなく、シンプルに「お名前教えてください」と聞くのがいいですね。
3)学内試験で悩みすぎない
学内試験は紛らわしい問題や選択肢がしばしばあります。もし、真意を聞きたいなら出題者に直接聞くしかありません。それを考えこんでしまうのは時間の無駄です。
今回の問題も解答がbと分かっているから、解説できましたが解答がなかったら別にbでもいいような気もします。国試では紛らわしい質問はでませんので、あまり気にされないほうが皆さんのタメです。