モルヒネ内服と放射線治療。「まず」行うのは?

最終確認日:2017/07/29 最終更新日:2017/07/29

コウメイ:読者の方から「癌性疼痛の治療」について質問をいただきましたので回答します。まずは質問の元になった問題を見てみましょう。

第107回医師国家試験C30

48歳の男性。腹部膨満感、咳、腰痛および腹痛を主訴に来院した。

現病歴:2年前に胃癌で胃全摘術を受け、その後外来で約6か月間の抗癌化学療法を受け外来通院で経過観察となった。1年前に腫瘍マーカーの上昇と肝転移とを指摘され、再度抗癌化学療法を受けたが、食欲不振が高度となり、治療効果が認められず中止となった。4か月前から上腹部の膨満、咳および腰痛を自覚していた。

画像診断で軽度の腹水貯留と肝、肺および腰椎への多発転移が認められた。利尿薬、鎮咳薬および非ステロイド性抗炎症薬の処方にて落ち着いていたが、3日前から新たに腹部の鈍痛が出現したため受診した。経口摂取は可能である。

まず行うべき治療はどれか。

  1. 輸血
  2. 放射線治療
  3. 抗癌化学療法
  4. モルヒネの経口投与
  5. フェンタニルの持続注入

 

この問題に対し以下のような疑問を持ったようです。

読者からの質問

107C30について質問です。モルヒネを使うことは理解できるのですが、腰痛に対し放射線療法は適応とならないのでしょうか?

 

今回は放射線治療がいいのか、モルヒネ治療がいいのかについて考えていきます。

腹痛が主訴

この患者が現在気になっていることは何でしょうか?いくつか症状は書いてありますが、「3日前からの新たな腹部の鈍痛」が一番気になっていることでしょう。ということで、今回は腹部の鈍痛をどうにかする必要があるわけです。

 痛みに対する基本的な治療は鎮痛薬の経口投与です。選択肢の中では「モルヒネの経口投与」です。もちろん、放射線治療による治療もあります。適応か適応でないかと言われれば適応です。しかし、今回正解にはなりません。「まず」行うべき治療ではないからです。

 

モルヒネの経口投与

モルヒネは投与量を決めればその日から開始できます。皆さんも研修医になったら指導医と一緒に考えて処方することがあると思います。

 

放射線治療

一方、放射線治療は「まず」行うことができません。その理由は3つあります。

どこでもできる治療ではありません。

放射線治療はどこの病院でもできるわけではありません。大学病院のような大きな病院でないとできません。
※モルヒネは一般的な病院で処方することができます。

患者さんは平日働いています。

放射線治療は大学病院に行ったからといってすぐにできるわけではありません。予約が必要です。しかも平日です。放射線治療は基本的に10回行う必要があります。

学生のうちはあまり意識しないことですが、患者さんは平日働いています。働いている人が平日に10回も休むのはなかなか大変です。会社側と相談する必要があります。

すぐに効果があるわけではありません。

放射線治療はすぐに痛みが治まるものではありません。数週間かけて徐々に痛みが治まります。

以上の理由で放射線治療は「まず」行う治療ではありません。 もちろん緊急で放射線治療を行う場合もありますが、今回は緊急性は低いです。「まず行うべきは」モルヒネの経口投与がよいでしょう。

今回は以上で終わりです。お疲れ様でした(^_^)