基礎医学はどこまで勉強すべきか?

コウメイ:読者方から質問をいただいたので回答します。

読者からの質問

いつもブログを楽しく見させていただいています。

早速質問なのですが、コウメイ先生は基礎医学(特に生化学など)をきちんと理解しておいて良かった、しておくべきだったと感じることはありましたか?

僕はいま4年生なのですが、低学年の時に基礎医学勉強をおろそかにしてしまい、知識が抜けています。国家試験に必ずしも必要でないのはわかるのですが、医者になってからどういう形で基礎医学が重要になってくるのか知りたいです。

回答よろしくお願いします。

目次

1)医者になってすぐはあまり役に立ちません

正直あまり役にたたないと思います。例えば、痛風の治療をするとしましょう。痛風の治療はアロプリノールを処方して終わりです。アロプリノールが生化学的にどのように作用するか知っていても知らなくても、アロプリノールを処方することになります(アロプリノールが尿酸生成抑制薬であることぐらいは知っておいた方がよいかもしれませんが)。

実際の臨床で生化学を深く意識する場面はあまりないと思います。

2)極めようとすると役に立ちます

このように、治療法が決まっており、それを真似する段階では基礎医学はあまり役に立たないでしょう。しかし、ある病気の専門家になり、より良い治療を開発したり新たな治療を見つけようとしたりするときに役に立ちます。

例えばまた痛風で考えてみましょう。まだ、尿酸生成抑制薬がなかった時代のことを考えてみてください。治療はどうしましょうか?もし尿酸の生成に関する生化学の知識がなかったら何も治療法は思い浮かばないでしょう。しかし、以下の知識があったらどうでしょう。

基礎医学_尿酸の代謝経路_キサンチンオキシダーゼ

尿酸はヒポキサンチンとキサンチンにキサンチンオキシダーゼが作用してできることが分かります。すると、「じゃ、キサンチンオキシダーゼを阻害する薬を作ればいいんじゃね?」という発想をすることができます。その結果できた薬が、アロプリノールです。

このように、新しい治療を開発する時に基礎医学が役に立ちます。

3)全てを暗記する必要なんて無い

今までの説明を聞くと、基礎医学って大事で面白いと思いませんか?

ではなぜ基礎医学がつまらなく感じるのか?それは全てを丸暗記しようとするからだと思います。試験に出るからしかたなく丸暗記せざるを得ないと言った方が正確かもしれません。

私が学生の頃に、必須アミノ酸の構造式を学生に暗記させようとする基礎医学の講師がいました。当時は試験のためにしかたなく覚えましたが、もう覚えていませんし、臨床で役に立ったことはまだありません。

しかし、何かで必須アミノ酸の知識が必要になる時があるかもしれません。その時はgoogleで必須アミノ酸と入力すればいいだけです。すぐに知ることができます。しかも正確です。

4)必要な時に調べればいいだけ

というわけで、基礎医学は利用法を間違えなければ、重要で面白いものです。

4年生以降であれば、基礎医学を再度勉強し直すのではなく、何か病気を勉強していて気になった時に、調べるのがよいかと思います。その時も全てを丸暗記する必要はありません。必要な部分のみ覚えて、後はワードに貼り付けたり、Evernoteに保存したり、もしくはまた必要なときにgoogleで調べ直せばよいだけです。このような考えだと、基礎医学アレルギーが少なくなり勉強が楽しくなるかもしれません。

以上で基礎医学に対する私の考えを述べましたが、勉強をする上でのモチベーションupにつながれば幸いです。

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