低酸素症と低酸素血症との違い

コウメイ:低酸素症について質問をいただきました。

読者からの質問

低酸素症であっても、動脈血酸素分圧の低下がみられない事があると習いました。病態がイマイチ理解できないので教えて下さい。換気血流量不均衡などが原因として考えられますか?

目次

1)低酸素症とは末梢組織の酸素量が少ない状態

低酸素血症とは文字通り血液中(動脈)の酸素が少ない状態です。SpO2やSaO2、PaO2が少ない状態とも言えます。一方、低酸素症は末梢組織の酸素量が少ない状態です。

もちろん、血液中の酸素が少なければつまり低酸素血症であれば低酸素症にもなりますが、低酸素血症がなくても低酸素症になることがあります。なぜそんなことが起こるのかというのが今回の質問です。いくつか原因があるので順に説明していきます。

2)低酸素症の原因

低酸素血症

先程も説明しましたが、低酸素血症があれば当然低酸素症になります。

組織低灌流

狭心症を考えてみましょう。冠動脈が一部細くなっており、その先には血液がちょろちょろとしか流れません。流れている血液の酸素分圧は正常なのですが、絶対量が少ないです。そのため末梢組織は十分な酸素を受け取ることができません。つまり低酸素症となります。

組織酸素利用能の低下

今後は青酸カリを考えてみましょう。これはとても危ない物質ですがどのように危ないか知っていますか?

なぜ青酸カリが危ないかというと、ミトコンドリアが酸素を利用できないようにしてしまうんです。そのため、血液中に十分な酸素があっても組織ではうまく利用することができません。これも低酸素症です。

酸素需要バランスの失調

甲状腺機能亢進症や敗血症を考えてみましょう。これらは代謝がめちゃくちゃ亢進します。末梢組織で酸素を大量に利用します。その結果、血液中に酸素が正常に存在しても末梢組織としては酸素が少ない状態となります。つまり低酸素症です。

貧血

最後に貧血を考えてみましょう。貧血ではSpO2やSaO2、PaO2の低下はありませんが、血液中の酸素の絶対量は減っています。末梢組織に必要な酸素を運ぶことができません。低酸素症となります。

3)換気血流量不均衡ではどうなる?

換気血流不均衡では動脈血酸素分圧が低下する結果、低酸素症となることがあります。動脈血酸素分圧が正常なのに低酸素症にはなりません。

目次