コウメイ:医師国家試験102E9について質問をいただきました。まずは問題を見てみましょう。
血圧は低下し、皮膚は温かく紅潮している。心拍出量は増加し、末梢血管抵抗は低下している。
この病態に当てはまるのはどれか。
a 出血性ショック
b 心原性ショック
c 敗血症性ショック
d 神経原性ショック
e アナフィラキシーショック
次に質問をご紹介します。
a(出血性ショック)、b(心原性ショック)が明らかに違うのは分かりますが、e(アナフィラキシーショック)も正解のような気がします。どちらも末梢血管が拡張して暖かくなり、代償で心拍出量が増えそうな気がします。
アナフィラキシーは短時間で進行し、短時間で治療するため病態を把握するのが難しく、あまり教科書に説明がありません。おそらく下記のように考えられます。
1)末梢血管抵抗は低下する
アナフィラキシーショックでは末梢血管抵抗は低下します。これは多くの教科書に記載があり異論はないでしょう。
2)心拍出量は増加する
末梢血管抵抗が低下する結果、血圧が低下します。それを代償するために心拍出量は増加します。113B7で「心拍出量増加、体血管抵抗減少、中心静脈圧低下および肺動脈楔入圧低下の血行動態を示すのはどれか。」という問で、アナフィラキシーショックが正解となっており、これも間違いないです。
3)皮膚は紅潮する
アナフィラキシーショックで皮膚は紅潮します。教科書に記載があり、googleなどで画像検索することができます。
4)皮膚温は上昇しない(重要)
この問題のポイントは皮膚温だと思います。おそらく皮膚温は上昇しません(もしくは稀です)。医師国家試験で皮膚温が問われたことはありませんが、看護師の国家試験で以下のような問題が出題されました。
皮膚が温かいショック患者で考えられるのはどれか。
1. 心原性ショック
2. 出血性ショック
3. 神経原性ショック
4. エンドトキシンショック
5. アナフィラキシーショック
正解は4のエンドトキシンショックで、5のアナフィラキシーショックは不正解となっています。つまり、厚生労働省的にはアナフィラキシーショックで皮膚は温かくならない(もしくは稀)と考えていることが分かります。
次に気になるのはその理由(病態)ですが、前述したように、アナフィラキシーショックは短時間で進行し、短時間で治療するため皮膚温について詳細に記載してある教科書は見たことがありません。しかし、動物実験では下がるとの報告があります(PLoS One. 2016; 11(3): e0150819.)。おそらく人間も同様で、少なくとも皮膚温が上昇するのは一般的ではないと考えられます。
以上、アナフィラキシーショックについて考察しました。気になるところだとは思いますが、これ以上は深入りしないのがよいと思います。