ショック+高ナトリウム血症で使う輸液製剤は?【看護の現場ですぐに役立つ輸液のキホン】

コウメイ:『看護の現場ですぐに役立つ輸液のキホン』をご購入いただいた方から質問をいただきましたので回答します。まずは質問の該当ページ(p75)の概説をします。

p75の概説

【症例】30歳男性、工事作業員。夏の暑い中、あまり水分をとらず働いていたところ、気分が悪くなり、軽度意識も悪くなってきたため救急搬送された。血圧90/45mmHg、脈拍数110/分。尿はほぼ出ていないとのこと。

【解説】この症例はショックバイタルです。かつ尿もほぼ出ていません。細胞外液が減少しているのは明らかです。よって、細胞外液(生食)を投与します。

この説明に対し以下のような質問を持ったようです。

読者からの質問

症例では、軽度意識障害があるという設定ですが、この意識障害の原因は、脱水による血圧低下よりも、高張性脱水により脳神経細胞の脱水が原因だとも考えられそうです。初期輸液は生食よりも、細胞外と同時に細胞内にも水を届けることを目的に1号液か2号液が良いように感じます。この症例の意識障害に関して、どう判断すれば良いのか、先生のご意見をお教え頂ければ幸いです。

ご質問ありがとうございます。ご指摘のように、高張性脱水による脳神経細胞の脱水の可能性もあります。その評価やCrea、CKなどの評価のため血液検査は必要です。本症例は細胞外液を説明する一連のものとなっております。ここで、血液検査を記載すると本質が分かりにくくなってしまうため敢えて省きました。

目次

1)ショック+高ナトリウム血症はショックの治療を優先する

では血液検査で高ナトリウム血症があったらどうでしょうか。その場合でも初期輸液は生食で問題ないかと思います。高ナトリウム血症の治療の基本は5%ブドウ糖液ですが、それはバイタルが安定しているのが前提です。ショックバイタルのときは細胞外液を入れ、バイタルを安定させるのが優先されます。

また、高ナトリウム血症を低張液で急激に補正すると細胞の浮腫が起こるとされます。本症例ではショックバイタルであり、比較的大量の補液が必要となるでしょう。1号液を大量に入れると急激に血中ナトリウム濃度が下がり、細胞の浮腫が起こる可能性があります。この点からも初期輸液としては生食がよいでしょう。

2)バイタルが安定した後で高ナトリウム血症の治療を行う

生食を入れるだけで高ナトリウム血症はある程度改善します。バイタルが安定したら再度血液検査を行い、それでも高ナトリウム血症があれば5%ブドウ糖や3号液の投与を検討することになります。ちなみに、2号液を置いてある病院はかなり少ないのではないでしょうか。私はまだ見たことがありません。

なお、本書は基本的に看護師さん向けのものであり、医師が知っておくべき知識が不足なく記載されているわけではありませんので、その点はご了承ください。医師が本書のみの知識で複雑な輸液に対応するのは難しいですが、看護師や医大生(輸液が苦手な初期研修医)にとってはお勧めできる内容となっております。ぜひご覧いただけば幸いです。

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