コウメイ:今回は皆さんが研修医になってからとても役に立つ問題です。
医師国家試験101B115
成人における大腿静脈の穿刺部位はどれか。
a 鼠径靭帯の高さで血管の拍動から1cm外側
b 鼠径靭帯から2cm中枢で血管の拍動から1cm外側
c 鼠径靭帯から2cm中枢で血管の拍動から1cm内側
d 鼠径靭帯から2cm末梢で血管の拍動から1cm外側
e 鼠径靭帯から2cm末梢で血管の拍動から1cm内側
正解(クリック)
静脈は動脈(血管の拍動)の内側なのでc(鼠径靭帯から2cm中枢)かe(鼠径靭帯から2cm末梢)までは考えることができるかと思います。正解はe(鼠径靭帯から2cm末梢)でc(鼠径靭帯から2cm中枢)は絶対にダメです。
穿刺はからなず鼠径靭帯より末梢で行う必要があります。
中枢がダメな理由は2つあります。
目次
1)止血が困難
鼠径靭帯より中枢は腹腔です。広いスペースがあります。穿刺した後、圧迫止血する必要がありますが、スペースがあるためうまく止血することができません。一方、鼠径靭帯より末梢はあまりスペースがありません。圧迫しやすく止血しやすいです。もし少し血液が漏れてしまってもスペースが狭いので止まりやすいです。
2)鼠径靭帯より中枢には消化管
鼠径靭帯より中枢は腹腔であり、消化管があります。よって、鼠径靭帯より中枢を穿刺すると消化管を穿刺してしまう可能性があります。
以上2つの理由から鼠径靭帯より中枢ではなく、末梢で穿刺する必要があります。
3)動脈穿刺も鼠径靭帯より末梢で行う
今までの説明は大腿動脈を穿刺する場合も同様です。皆さんが研修医になると大腿動脈から血液ガス測定をする機会があると思いますが、必ず鼠径靭帯より末梢で行うようにしてください。