敗血症性ショックで心拍出量は上がるのか?

最終確認日:2017/07/22 最終更新日:2017/07/22

コウメイ:読者の方から「敗血症性ショック」について質問をいただきました。病態を理解する上で非常によい内容です。一緒に考えていきましょう。

読者からの質問

質問者:以下の国試について質問です。

【医師国家試験102E29】
血圧は低下し、皮膚は温かく紅潮している。心拍出量は増加し、末梢血管抵抗は低下している。この病態に当てはまるのはどれか。

  1. 出血性ショック
  2. 心原性ショック
  3. 敗血症性ショック
  4. 神経原性ショック
  5. アナフィラキシーショック

正解:c

質問者: a、bが明らかに違うのはわかりますが、eも正解のような気がします。どちらも末梢血管が拡張して暖かくなり、代償で心拍出量が増えそうな気がします。

また、dの神経原性ショックもよく分かりません。脊損などで交感神経系の急激な低下によりおこるというのが理解出来ません。脊損なら交感神経も副交感神経も両方障害されそうです。

 

血圧=心拍出量×末梢血管抵抗

コウメイ:血圧と心拍出量は以下の式で表されます。

血圧=心拍出量×末梢血管抵抗
心拍出量=1回の拍出量×心拍数

※1回の排出量は心収縮力、前負荷、後負荷によって決まります。

以上を頭に入れた上で、敗血症とアナフィラキシーで血圧、心拍出量がどのようになるか考えてみましょう。

 

敗血症の場合

※敗血症は複雑で分かっていない部分が多いです。ここでは病態を理解するためシンプルに考えていきます。

敗血症の病態は大きく2段階に分かれます。初めに末梢血管が拡張し、その後血管透過性が亢進します。

末梢血管拡張が拡張

末梢血管が拡張した場合を考えましょう。末梢血管が拡張すると言うことは、末梢血管抵抗が低下することとイコールです。

「血圧=心拍出量×末梢血管抵抗」ですから、末梢血管抵抗が低下すると血圧は下がります。血圧が下がると末梢に血液を送ることができません。血圧を維持するには心拍出量を上げる必要があります。心拍出量を上げることはできるでしょうか?

「心拍出量=1回の拍出量×心拍数」ですから、心拍出量を上げるには1回の拍出量か心拍数か、その両方を上げればよいです。心拍数は上げることができますね。1回の拍出量は上げることができるでしょうか?

1回の拍出量は心収縮力、前負荷、後負荷によって決まります。心拍出量は交感神経系の刺激で上げることができます。前負荷とは簡単に言うと心臓へ戻ってくる血液の量のことです。補液をすれば別ですが、前負荷はほぼ不変でしょう。後負荷は簡単に言うと末梢血管抵抗のことです。後負荷は低下しています。

まとめると、心拍出量に影響する因子は次のようになります。

  • 心拍数・・・↑
  • 心収縮力・・・↑
  • 前負荷・・・→
  • 後負荷・・・↓

心拍出量を上げる要因が多いので心拍出量は上がります。

末梢血管は拡張するので皮膚は温かく感じます。この状態がいわゆるwarm shockです。

血管透過性の亢進

warm shockは長くは続きません。敗血症は次第に血管透過性が亢進し、血液の水分が間質に漏れてしまいます。その結果、循環血液量は低下します。

敗血症の初期では心収縮力を上げることができました。しかし心臓も疲れてしまいます。次第に心収縮力は低下します。

交感神経系の亢進や血管内皮の障害から末梢血管は拡張から収縮に転じます。

まとめると、心拍出量に影響する因子は次のようになります。

  • 心拍数・・・↑
  • 心収縮力・・・↓
  • 前負荷・・・↓
  • 後負荷・・・→〜↑

心拍出量を下げる要素が多いので心拍出量は下がります。末梢血管は収縮するので皮膚は冷たくなります。いわゆるcold shockですね。

 

アナフィラキシーの場合

次にアナフィラキシーについて考えてみましょう。アナフィラキシーはヒスタミンなど様々な化学物質が関与するとされます。その結果、末梢血管は拡張し、心収縮力は抑制され、血管透過性が亢進します。血管透過性が亢進するので、血管の水分が間質へと漏れます。

心拍出量に影響する因子は次のようになります。

  • 心拍数・・・↑
  • 心収縮力・・・↓
  • 前負荷・・・↓
  • 後負荷・・・↓

よって、心拍出量は低下します。「血圧=心拍出量×末梢血管抵抗」なので、血圧は当然下がります。

 

問題の回答

敗血症性、アナフィラキシーの病態を理解したところで、医師国家試験の問題を考えてみましょう。

血圧

「血圧は低下」は敗血症、アナフィラキシーのどちらにも当てはまります。

皮膚温

「皮膚は温かく紅潮している」は敗血症、アナフィラキシーのどちらにも当てはまります。

心拍出量

「心拍出量は増加」は敗血症のwarm shockが当てはまります。アナフィラキシーでは心拍出量は低下します。

末梢血管抵抗

「末梢血管抵抗は低下」は敗血症、アナフィラキシーのどちらにも当てはまります。

よって、「血圧は低下し、皮膚は温かく紅潮している。心拍出量は増加し、末梢血管抵抗は低下している」のは敗血症のwarm shockになります。

 

神経原性ショック:脊損で傷害されるのは?

次に神経原性ショックについて考えてみましょう。心臓に分布する交感神経と副交感神経の走行を確認してみてください。

※心臓に分布する副交感神経は迷走神経です。

 

◎交感神経

視床下部⇒脊髄⇒脊髄管⇒心臓

◎副交感神経

視床下部⇒延髄⇒心臓

※簡単にまとめましたが、アトラスで自分で確認してください。こういう小さい確認の積み重ねが今後の伸びに大きく影響します。

 

上記から分かるように心臓に分布する副交感神経は脊髄を通りません。ですので、脊髄が傷害されても副交感神経は傷害されません。その結果、副交感神経優位になりショックになってしまうのです。

今回は以上で終わりです。お疲れ様でした(^_^)