この度、輸液の本が出版されましたのでご紹介させていただきます。
1)本書を書いた理由
輸液はどの科で働いていても必ず必要になるものです。しかし、学生時代に系統的に勉強することはなかったと思います(専門の科が決まっていないからしょうがないのかもしれません)。
そこで、医大生も看護学生も国試のときや、国試が終わり実際に働いてから輸液の勉強をすることになるのですが、初学者にとってなかなかいい本がありません。
医師向けの輸液の本はたくさんありますが、病態のことがずらずら書いてあり、「で、結局どの輸液製剤を使えばいいの?」となり、すぐに役に立つ内容ではなかったりします。
看護師さんの本は手技を分かりやすく説明している本が多く非常にタメになります。しかし、「ある輸液製剤をどのような患者に使えばよいか?」をそこそこ詳しくかつ分かりやすく書いてある本は見つけることができませんでした。
何かを勉強する上で順序は非常に大切と考えております。輸液の本の中には複数の著者で書かれているものがあります。著者が複数いると、前後の統一性がなくなり、前で説明されたことを再度説明したり、一部の内容が極端に難しくなったり、ページの終わりの方でで基本的な内容の説明になったりと非常に読みにくい本になってしまう可能性が高いです。
一人で一冊の本を書き上げるというのはかなり大変なことなので、実際の現場で使う輸液製剤の内容を、勉強すべき順序で統一性を持って書いてある本はなかなか無いのが現状です。
というわけで、「こんな本あったら勉強しやすいだろう」という本を執筆することになりました。具体的な内容は以下の通りです。
2)本書の目次
chapter1 準備ができる
点滴ラインを準備する・・・16
穿刺に必要な器具を準備する・・・22
chapter2 穿刺ができる
穿刺の大まかな流れ・・・28
駆血帯のポイント・・・30
翼状針、留置針の使い方・・・31
翼状針、留置針の選び方・・・39
針の太さ・・・41
固定の仕方・・・43
chapter3 速度調節ができる
20滴で1mL・・・46
輸液ポンプで速度を調節する・・・50
シリンジポンプで速度を調節する・・・56
ここまで読み終えて・・・62
chapter4 症例から輸液製剤を考える
[症例1] 造影CTで血圧低下・・・64
[症例2] ハチ刺されで血圧低下・・・67
輸液をより理解する① 体内の水の分布と移動・・・69
輸液をより理解する② 食塩水とブドウ糖液・・・70
輸液をより理解する③ ソルデム3Aとソルデム1・・・73
[症例3] 熱中症で血圧低下・・・75
輸液をより理解する④ 細胞外液・・・78
輸液をより理解する⑤ 1号液・・・79
輸液をより理解する⑥ 3号液・・・80
輸液をより理解する⑦ 5%ブドウ糖液・・・81
[症例4] 手術の際の輸液は?・・・82
[症例5] 小児の輸液(その1)・・・84
[症例6] 小児の輸液(その2)・・・86
輸液をより理解する⑧・・・88
輸液をより理解する⑨・・・89
[症例7] 細胞内にも水分を(その1)・・・90
[症例8] 細胞内にも水分を(その1)・・・93
[症例9] 主に細胞内に水分を・・・96
[症例10] 点滴はしたくない?・・・98
chapter5 投与法を詳しく知る
投与時の注意点・・・102
三方活栓の使い方(その1)・・・105
三方活栓の使い方(その2)・・・107
輸液バッグの交換の仕方・・・109
ヘパリンロック・・・111
留置針の交換の頻度・・・114
chapter6 輸液製剤を詳しく知る
カリウム(K)製剤の使い方・・・116
ワンショット防止・・・122
ソルアセトFとソルアセトDとの違い・・・124
緩衝剤は何のため?・・・125
生食は必要ない?・・・126
真水を血管に入れてはダメ?・・・129
ビタミン剤はなぜ使う?・・・130
ビーフリードとは?・・・132
2号液と4号液・・・134
chapter7 病態を詳しく知る
ショックとは?・・・136
アナフィラキシーショック・・・138
アドレナリンの作用・・・140
うっ血性心不全のライン確保・・・143
3)本書が役に立つ方と役に立たない方(医大生、初期研修医、看護師さん)
目次を見ていただければ、自分にとって役に立ちそうか(買うべきか)、役に立たなそうか(買わないべきか)大体分かっていただけたかと思いますが、どのような方が役に立つか考えてみます。
医大生
タイトルに「ナースのための」とありますが、医師国家試験や初期研修医になってからも使える知識もかなり書いてありますので、ほとんど全ての医大生の役に立つはずです。
医学書は高いのが当たり前となっております。「こんな薄い本で1万円もするの〜?」という本がざらにあります。学生のときに不思議に思っていました。「普通の本の値段で医学書を作ることはできないのか?」と。普通の本の値段で医学書を作ることは可能です。本書は定価1,500円(税別)です。確実に値段以上の価値はあると思います。
初期研修医
初期研修医になると役に立つ方と役に立たない方に別れます。
初期研修医になったばかりの方で、国試の輸液の問題は何となく解いたけど、輸液の本格的な勉強をしたことがない方にはきっと役に立ちます。
初期研修になってからは色々な輸液の本を読むことになります。よい内容が書いてあるけど、基本的な知識がないと理解するのが難しい本が多々あります。そのような本を読む前段階としても、本書は役に立つでしょう。
既に他の本で勉強された方にとっては既知の内容であり、物足りないかもしれません。敢えて買う必要はないでしょう。しかし、色々な本を買ってはみたけれど、難しくて結局はあまり読めていない方にとっては、それらの本を読む前段階として有用です。
看護師さん
(目次にありますように)本書は輸液製剤の内容だけではありません。輸液に必要な物品の準備、針の刺し方、輸液ポンプやシリンジポンプの使い方などから説明しております。
国家試験に合格し、これから働き始める看護師さんにとっては非常に有用な内容になっています。
針の刺し方や日常の業務は問題なくできるけど、輸液製剤の使いわけをよく知らない方にとってもオススメです。
もちろん、輸液製剤の使い分けを知らなくても医師のオーダー通りに点滴をしていただければ業務には支障がないかもしれません。しかし、ある程度輸液製剤の使い分けを知っていると、日常の業務がより楽しものになったり、医師が間違ってオーダーした内容に気がついたりすることができるかもしれません。
ある程度輸液の内容について知ることは看護師さん自身や患者さんにとってタメになると思います。
以上、本書では医大生、初期研修医(になったばかりの先生)、看護師さんにとってすぐに役に立つ内容となっております。ぜひ、本書を読んでいただき、明日からの業務にお役立てていただければ幸いです。