2021年6月30日に「他科コンサルト」についての本が出版となりました.主に医師(医大生,初期研修医,後期研修医,指導医)向けの内容になっています.
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※いずれも送料無料です.定価は4,840円(税込み)です.
目次
0)そもそもコンサルトとは?(第1章無料ダウンロード)
医大生や初期研修医になりたての方にとってコンサルトはあまりイメージがつきにくいかもしれません.本書の第1章ではそのような方向けに,コンサルトの基本について解説しました.下記から無料で読むことができます!
他科コンサルト実践マニュアル_第1章(クリック)
1)コンサルトの基準を作りたい
臨床医として働くと日常的にコンサルトをしますが,絶対的な基準は存在しません.施設や患者の状態によって基準が異なるので絶対的な基準を作るのは難しいですが,全く知識がない場合,無難なコンサルトをするのが難しくなります.よって,全国共通の一定の基準を作成するのは意義があると考え,本書を作成することになりました.また,一定の基準が存在すると,それを元により良いコンサルトについて議論をすることができます.
具体的なコンサルトの場面や目次は下記(羊土社ホームページ)をご参照ください.
https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758123754/index.html
2)本書の特徴
①コウメイが全ページを編集
②コンサルトのタイミングを重視
③「他科へのお願い」を掲載
①コウメイが全ページを編集
医学書ってどのように作成するかご存知でしょうか?もちろん執筆者が原稿を作成するのですが,それだけでは書籍にはなりません.オリジナルの原稿をより読みやすくするため編集者が編集を行います.
この編集をどこまでするかによって,書籍の内容・分かりやすさに差がでてきます.
その分野に詳しい編集者が熱心に編集すればより良い医学書になり,そうでない編集者が編集すればイマイチな医学書になる可能性が高くなります.
今回私は編集者として全ての原稿を読み,より読者にとって分かりやすくかつ実践的な内容になるよう何度も執筆者とやりとりを行いました.
②コンサルトのタイミングを重視
本書と類似の書籍に救急マニュアルがあります.書籍によっては1から10までとても詳しく治療法が書いてあり勉強にはなるのですが,実臨床で1から10までを1人で行うことはあまりありません.どこかの段階で専門科にコンサルトをするのが一般的です.コンサルトをするタイミングが適切でないと医師にとっては負担になるだけで,患者にとってはあまりメリットがありません.
本書では実臨床に即し,コンサルトをする前提で疾患の説明をするようにしました.
③「他科へのお願い」を掲載
後期研修医以降になると,コンサルトをする側だけではなく受ける側にもなります.その際,
「本来なら○○してからコンサルトしてほしい(けどなかなか言えない)」
「いつもこの検査してからコンサルトされるけど,実はしない方がいい(けどなかなか言えない)」
と思うことがあります.
センシティブな内容なので書籍に掲載されることはあまりないのですが,重要な内容ですので本書では掲載することにしました.
3)各科の見どころ(随時更新)
①消化器内科(2021/08/22更新)
コンサルトのタイミングと初期対応
腸閉塞,下痢,血便は特に経験することが多いので,予め読んでおくとよいです.
異物誤飲は緊急性の判断が重要であり,p32の表1(内視鏡的異物摘出術の適応)が参考になります.
他科からの質問
救急では血液検査や腹部CTを施行しても原因がはっきりしない腹痛を経験します.その場合の対応について記載していただきました.
他科へのお願い
p37に「嘔吐を安易に急性胃腸炎と診断しないようにしてください」とあります.落ち着いて本を読んでいる今は「何を当たり前のこと書いてあるんだ?」と思うかもしれませんが,忙しかったり診療に慣れてきたりするとそのように判断してしまう可能性がありますので,意識しておくとよいです.
p39の内視鏡依頼の具体例はシンプルですが,とても参考になります.
・上下部消化管内視鏡検査依頼,貧血精査
・上部消化管内視鏡検査依頼,SCC値高値のため食道精査希望
・下部消化管内視鏡検査依頼,便潜血検査要請
p39では内視鏡検査・治療の際の抗血小板薬・抗凝固薬の休薬の判断の参考に,「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡ガイドライン」を紹介しています.詳しく調べるには何を参考にすればよいかを知ることができるのはとても有用です.
②肝胆膵科(2021/09/04更新)
コンサルトのタイミングと初期対応
・肝機能障害の鑑別疾患は多く検査すべき血液検査もたくさんあり,非専門科にとってどこまでオーダーすべきか悩みます.本書では一定の目安(非専門科でも行うべき検査,非専門科では行わない方がよい検査)を記載していただきました.
・救急当直では急性胆嚢炎と急性胆管炎はよく経験しますので,予め読んでおくとよいです.
他科からの質問
・入院時や観血的な検査の前にスクリーニングとしてHBs抗原,HCV抗体検査をすることがあります.多くの場合は陰性になり問題ないのですが,ときに陽性になることがあります.その際の対応について記載していただきました.
・AST,ALT,γ-GTPはスクリーニングとして検査することが多い項目でありしばしば高値になります.その際に追加で行った方がよいこと,逆に行わない方がよいことについて記載していただきました.
他科へのお願い
・最近の国試(110A4,115D72)にも出題され学生でも知っている方が多くなりましたが,免疫抑制剤もしくは抗癌剤の使用はB型肝炎を再活性化させる可能性があります.これらを使用する前にスクリーニングとしてHBs抗原,HBc抗体,HBs抗体の測定が必要です.結果の解釈はp55図2のフローチャートを参考に行います.
③循環器内科(2021/10/04更新)
コンサルトのタイミングと初期対応
救急当直をすると動悸の患者を診療することがしばしばあります.原因として発作性上室性頻拍(PSVT)や心房細動(Af)のことが多いです.それぞれ対応が異なります.PSVTの場合はATPの急速静注が検討されます.躊躇(ちゅうちょ)してゆっくり静注しては効果がありませんので,一気に静注するのがポイントです.詳しくはp59,60をご覧ください.
※心電図での見分け方に不安がある方は拙書『これだけ心電図』をご参照ください.
他科からの質問
どの科でも外来を行っていると,担当の患者で心不全が疑われる場合(呼吸困難,下腿浮腫など)があるかと思います.循環器内科の先生にコンサルトが検討されますが,その前に行っておくとよい検査や鑑別が記載されており参考になります(p64).
他科へのお願い
これから手術が予定されている患者で,術前評価のため循環器内科へコンサルトすべきか判断が必要なケースがあるかと思います.p68図1のフローチャートが参考になります.
④呼吸器内科(2021/10/13更新)
コンサルトのタイミングと初期対応
救急当直をすると気管支喘息発作をしばしば経験します.何度か経験するとスムーズに対応できるのですが,国試では詳しく出題されることがないので,慣れていないと何をしてよいか分からないと思います.救急当直に入る前にp71で気管支喘息発作の対応について確認しておくのがよいです.
他科からの質問
外来を行っていると持続する咳嗽をしばしば経験します.ガイドライン(咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019)はあるのですが,分量が多く,非専門科が読み込むのはやや大変です.本書は専門科へコンサルトできることが前提ですので,読みやすい分量・内容で記載していただきました.
胸部レントゲンは侵襲性が低い検査ですので施行することが多く,しばしば胸部異常陰影を経験します.陰影をしっかり読み対応するのが理想ですが,かなりの学習時間を要します.本書はコンサルトが前提ですので,専門的な画像の読み方ではなく,非専門科がすべきことをシンプルに記載していただきました.
他科へのお願い
検診で腫瘍マーカーが測定されているのを目にすることがありますが,PSA以外はあまり有用ではないとの考えが一般的かと思います.腫瘍マーカーを測定する意義について記載していただきました.
4)各先生方へのメッセージ
医大生
いろいろな疾患がでてきましたが,国試で出題される疾患が大半でした.つまり,国試の勉強は実臨床でも役に立ちます.おそらく本書を読む前より勉強するモチベーションが上がったことでしょう.このまま国試の勉強を継続していただければと思います.
初期研修医の先生
当直を本格的に始める前であれば,当直を具体的にイメージすることができ,少しは不安が解消されたかと思います.すでに当直を本格的に行っている場合は,本書に記載してある症例を経験し,実際にお役に立てたかもしれません.
しかし,紙面の都合で記載できなかったものもあり,疑問が解決できていないこともあるかと思います.もし本書で解決できない疑問がある場合は下記からご連絡ください.可能なものはwebで回答し,難しい場合は改版の際の参考にさせていただきます.
また本書の通りにコンサルトを行った結果,上級医やコンサルト先から何か指摘された場合もご連絡ください.内容によっては詳細に確認し,可能なものはwebで補足し,難しい場合は改版の際の参考にさせていただきます.
後期研修医・指導医の先生
後期研修医・指導医の先生はコンサルトを受ける側であることが多いと思います.普段思っているけどコンサルト元にはなかなか言えないでいること,もしくは本書の内容と違う考えがありましたら,下記よりご指摘いただければと思います.
読者の皆様全員へ
本書の作成は終わりではなくはじまりと考えております.皆様のご意見を元に,さらによい書籍(コンテンツ)を作成できればと思っています.何か気になる点がございましたら,ぜひ下記よりご指摘いただければ幸いです.今後もよろしくお願いいたします.
https://www.yodosha.co.jp/inquiry.html