コウメイ:大腸がん検診で便潜血が1回陽性、1回陰性になった方です。次の対応はどうしましょうか?
60歳の男性。大腸がん検診で便潜血陽性を指摘されたため来院した。検診結果は2回の検査のうち1回は陽性で、1回は陰性であった。自覚症状はない。10年前の胃がん検診で胃潰瘍瘢痕の疑いを指摘されている。
対応として適切なのはどれか。
a 経過観察
b 便潜血の再検査
c 腹部造影CT
d 上部消化管内視鏡検査
e 下部消化管内視鏡検査
正解はeの下部消化管内視鏡検査ですが、一見すると全部良さそうにみえます。なぜ他の選択肢ではいけないか、1つずつ考えていきましょう。
a 経過観察(不正解)
便潜血が陽性ということは癌の可能性があるということです。経過観察してはいけません。
b 便潜血の再検査(不正解)
再検査してどうしましょうか?陽性だったら下部内視鏡検査でいいと思いますが、陰性だった場合の対応が微妙になってきます。
先程も説明しましたが、1回でも陽性になれば癌の可能性があります。3回目が陰性だからといって、経過観察にするわけにはいきません。いずれにせよ、下部内視鏡検査での検査が必要になるので便潜血を繰り返すメリットはありません。
c 腹部造影CT(不正解)
CTをとれば癌を見つけられそうですが、初期の癌はCTでは分かりません。直接見ることのできる検査(内視鏡)をするべきです。
d 上部消化管内視鏡検査(不正解)
便潜血の検査として化学的方法と免疫学的方法とがあります。化学的方法は食事中の鉄にも反応します。免疫学的方法は人間の血液中の鉄にしか反応しません。よって、最近は免疫学的方法が多く用いられていると思います。
免疫学的方法は化学的方法より優れているように思えますが、胃液などによって変性した鉄には反応しません。よって、基本的には上部消化管出血では陰性となります。陽性となった場合は下部消化管出血を考えます。
もちろん大量に出血した場合は免疫学的方法でも陽性になると思いますが、この患者はそのような状態ではないのは明らかです。
よって、上部よりは下部での出血が疑われるので上部内視鏡検査を優先させることはしません。
e 下部消化管内視鏡検査(正解)
先程説明した通り、便潜血陽性の場合完全に胃潰瘍や胃癌を否定することはできませんが、大腸癌の方が可能性は高いです。よって、上部よりは下部内視鏡検査が優先されます。
以上で解説は終わりです。