【丸暗記不要】腎前性腎障害と腎性腎障害との見分け方

コウメイ(@kokusigokaku):腎不全の患者で腎前性か腎性かを判断する指標に以下のようなものがあります。特に研修医の先生はERなどでよく使うと思います。

腎前性腎不全と腎性腎不全の見分け方

おそらく数値を丸暗記したり、マニュアルを見ながら使用している方が多いかと思います。それでも問題ありませんが、自分で導くことができるとより病態への理解が深まりますので、ご紹介したいと思います。

覚えるべき数値

ここから色々な数値が出てきますが、覚えるべき数値は以下のものです。

  • 原尿:150L/日
  • NaCl:1g = 17 mEq  
  • 尿中Cr排泄量:1g/日

これを元に色々考えることができます。
※mEqはEqにm(ミリ)をつけたものであり、Eqはmol×電荷です。すごく簡単に言うと個数のようなものです。ダースに近い考えです。NaClは17mEqという数が集まると1gになります。読み方はメックです。

尿中Na濃度

1日の尿中NaCl排泄量はどの位でしょうか?1日に8gの食塩を摂取したとして、8gを尿中に排泄します。つまり、8g/日×17mEq/g =136mEqです。

この136mEqという数値はあくまでNaCl排泄量であり、今知りたいのはNa排泄量です(NaClとNaは区別する必要があります)。よって、NaCl排泄量を元にNa排泄量を考える必要があります。と言ってもそれほど難しくはありません。Naの主な供給源はNaClであり、かつNaClがほぼ全てNaとClに電離していると考え、Na量はおおよそ136mEqであろうと推測します。

これを濃度に変換します。尿量を2L/日として、136mEq/2L = 68mEq/Lとなります。

腎前性であれば尿細管でNaを最大限に再吸収するのでこれより低く、腎性であれば尿細管でNaを再吸収できないのでこれより高くなります。

「先程の数値と違うじゃないか?」と思われるかもしれませんが、塩分摂取量に影響されますので、あくまで目安になります。少なくとも医師国家試験では微妙な数値は出題されず、明らかに正しいか間違っている数値が出題されるはずですので、あまり気にしすぎなくて大丈夫です。

FENa

FENa(%)を式で表すと、(尿中Na濃度/血清Na濃度)×(血清Cr濃度/尿中Cr濃度)×100となりやや理解するのが難しいですが、本質は原尿として濾過されたNaのうちどの位が最終的に尿に排泄されたかを%で表したものです。

FENaの本質

本質を頭に入れ、FENaを導いてみましょう。まずは原尿中のNa量(A)からです。原尿は150L/日、Na濃度は140mEq/Lなので、Na量(A)=150×140 (mEq)です。尿中のNa量(B)は前述したように136mEq/日とします。

FENa=B/A=136/(150×140)=0.0065=0.65%となり、この辺りが正常値と考えられます。

先程と同様、腎前性であれば尿細管でNaを最大限に再吸収するのでこれより低く、腎性であれば尿細管でNaを再吸収できないのでこれより高くなります。

冒頭の表の数値とはやや異なります。繰り返しになりますが、冒頭の表の数値はあくまで目安です。臨床で使用する際は絶対的な指標ではないということを頭に入れ判断する必要があります。

尿中Cr濃度/血漿Cr濃度

上記2つが腎前性、腎性を鑑別する際に有名な指標ですが、尿中Cr濃度/血漿Cr濃度というものもあります。これも自分で導くことが可能です。

【正常】
尿中のクレアチニン量は1g/日とされています。尿量を2L/日とすると、尿中クレアチニン濃度は1g/2L⇔0.5g/L⇔500mg/L⇔50mg/dLとなります。血漿中のクレアチニン濃度は1mg/dLとしましょう。

尿中Cr濃度/血漿Cr濃度=50/1=50となり、この辺りが正常値と考えられます。

【腎前性腎障害】
尿中のクレアチニン量は1g/日でした。腎前性の場合尿量が低下しますので、尿量を0.5L/日とすると、尿中クレアチニン濃度は1g/0.5L⇔2g/L⇔2000mg/L⇔200mg/dLとなります。一方、血漿中のクレアチニンは腎不全のため上昇し2mg/dLとしましょう。

この場合、尿中Cr濃度/血漿Cr濃度=200/2=100となります。正常より高くなりそうなことが分かります。

【腎性腎障害】
腎性腎障害の場合も尿中のクレアチニン量は変わらず1g/日です。腎性なので尿量は2Lとしましょう。クレアチニン濃度は1g/2L⇔0.5g/L⇔500mg/L⇔50mg/dLとなります。血漿中のクレアチニンは腎不全のため上昇し2mg/dLとしましょう。

この場合、尿中Cr濃度/血漿Cr濃度=50/2=25となります。正常より低くなりそうなことが分かります。

以上3つの指標を自分で導くことができました。試験中に数値を忘れた場合でも対応することができます。

繰り返しになりますが、自分で導いたものは冒頭の表の数値とは若干異なります。冒頭の表はあくまで目安であり、個人差がありますので絶対なものではありません。臨床で使用する際はその点を考慮に入れる必要があります。

医師国家試験では微妙な数値を出す可能性は低く、符号を逆にして出題されると思います。ですので、冒頭の表の数値を丸暗記する必要はありません。ただし、自分で数値を導くことができれば深く理解しているということであり、他に応用することができます。

数値を丸暗記している勉強をしていたのであればちょっと考えを変え、一度自分で数値を導いてみることをお勧めします。

今回は以上で終わりです。