今回は無駄な時間を過ごさないために、効率のよい心電図の勉強法をお話したいと思います。
1)詳しい機序は気にしない
心電図の本を開くと以下の様な図が載っていることがあります。
この原理は心電図初学者がまず理解すべきことではありません。理解しなくても心電図は読めるようになります。大丈夫。
というか、心電図が読めるようになるために必要な知識ではありません。あまり気にしないようにしましょう。
2)病態を理解する
それよりは、病態を理解するようにしましょう。
例えば、心房細動って心臓でどのようなことが起こっているか知っていますか?洞不全症候群はどうですか?
ブロックはどうでしょうか?これらの病態を理解しないで心電図の波形の特徴だけ覚えても、つまらないし、覚えることができません。
病態とセットで、もっと正確に言うと、
病態から自分で心電図を考えられる
ようになることが大切です。
3)大事な心電図から勉強する
では何の心電図から勉強すべきかというと、頻度の多いものや致死的なものです。
心電図の本の中にはなぜか変更伝導を伴った心房細動がページの最初の方で説明されていて、心室細動がページの後の方にあったりします。
「変更伝導を伴った心房細動って何?」って感じですよね。あまり気にしなくて大丈夫です。病態的には面白いのですが、
心電図の初学者がまず学ばなければいけないことではありません。それよりは、心室細動や心室頻拍、心静止、PEAなど命に関わる心電図を学ぶべきです。
4)患者さんの状態を思い浮かべる
そして、これはあまり載っている本がないのですが、患者さんの状態を思い浮かべることが大切です。
例えば、完全房室ブロックと上室期外収縮を勉強するとしましょう。所見としては以下のようになります。
完全房室ブロック
- PP間隔とRR間隔はそれぞれ一定
- P波とQRS波のつながりが全くない
- PP間隔<RR間隔
上室期外収縮
- 予想される早期にP波、QRS波が出現
- QRS波の形は通常を同じ
これだけ覚えてもつまらないというか、臨場感がありません。ただお勉強している感じです。
心電図の所見プラス患者さんの状態も頭に入れることが大事です。
完全房室ブロックはかなりヤバイ状態です。
心拍数は20〜30/分であることが多く、意識はないかもしれません。一方、上室期外収縮は特に症状はありません。元気にしています。
このように患者さんの状態が分かるとやる気もでるし、心電図によってメリハリをつけて勉強することができます。
5)治療とセットで覚える
また、これも書いてある本が少ないのですが、心電図は所見だけ覚えても意味がありません。
じゃ、どうする?
というのが大事です。
看護師さんならドクターコールするのか?しないのか?医学生、医師ならどのように治療するのか?経過観察でよいのか?
これらを一緒に勉強するとより臨場感がわき記憶に残ります。
以上が、私が考える心電図の効率のよい勉強方ですが、これらを全て勉強できる心電図の本はおそらくありませんでした。そこで私が作りました。
6)目次
Chapter1 これだけは覚えよう心電図の基本
心拍数と波形に注目しましょう!・・・18
波形を読むとはパターンを知ることです!・・・19
正常な心電図のことを知りましょう・・・23
心臓は命令が伝わると収縮する・・・24
P波とQRS波の意味を覚える・・・25
ドクターコールのポイント・・・26
Chapter2 超緊急な心電図
超緊急な心電図1 心室細動・・・30
超緊急な心電図2 心室頻拍・・・34
ちょっと休憩 心拍数が多いのはいけない?・・・40
ちょっと休憩「あきみちくん」とおぼえましょう 電極の貼り方・・・41
超緊急な心電図3 心静止・・・42
緊急な心電図緊急な心電図超緊急な心電図4 無脈性電気活動・・・48
ちょっと休憩 AEDの適応は?・・・52
ちょっと休憩 AEDの使い方とポイント・・・53
超緊急な心電図のまとめ・・・55
Chapter3 緊急な心電図
房室ブロックの基礎知識・・・58
緊急な心電図1 第3度房室ブロック・・・60
ちょっと休憩 ペーシングって?・・・65
緊急な心電図2 第2度房室ブロック・・・66
緊急な心電図3 洞不全症候群・・・72
緊急な心電図4 心房細動・・・77
緊急な心電図5 心房粗動・・・82
緊急な心電図6 発作性上室頻拍・・・87
ちょっと休憩 心房細動、心房粗動、発作性上室頻拍の見分け方・・・90
ちょっと休憩 頻拍にもペーシング?・・・91
緊急な心電図のまとめ・・・92
Chapter4 ケース・バイ・ケースな心電図
ケース・バイ・ケースな心電図1 洞性頻脈・・・94
ちょっと休憩 タキってる?・・・98
ケース・バイ・ケースな心電図2 洞性徐脈・・・99
ちょっと休憩 心拍数と脈拍数との違い・・・103
ケース・バイ・ケースな心電図3 心室期外収縮・・・104
ケース・バイ・ケースな心電図4 上室期外収縮・・・109
ケース・バイ・ケースな心電図<番外編> アーチファクト・・・113
ケース・バイ・ケースな心電図のまとめ・・・118
心電図を学習して・・・119
演習問題・・・120
Chapter5 心電図をより詳しく知る
心電図の目盛りを知る・・・124
心拍数が「300÷大きいマス目の数」で計算できる理由・・・125
上室性と心室性のQRS幅の違い・・・128
第2度房室ブロックの分類・・・130
Wenckbach型房室ブロック・・・133
第1度房室ブロック・・・136
洞不全症候群の分類・・・139
ペースメーカー心電図・・・142
12誘導心電図・・・145
なぜ12個も誘導が必要なのか・・・149
心筋梗塞・狭心症・・・150
14個の心電図のまとめ・・・152
7)完璧主義な医大生へ
私は学生の頃は完璧主義者でした。
内科ならハリソン内科学をきちんと読もう。
そう思いハリソン内科学を購入しましたが、実際に読んでみるとよく意味が分からず、結局読まずしまいになってしまいました。その後、ステップ内科学を読むようになり分かりやすさに感動です。
今は、「まずは分かりやすい本から読んでみるのが大事」と思っています。
心電図を完璧に勉強したいけど、実は基本的なことをよく理解していない医大生にぜひ読んでいただきたいです。
8)看護師さんへ
この本を執筆するにあたり、出版されているナース向けの心電図の本を一通り読んでみました。正直言って「これ本当に看護師さんの役に立つのかなぁ?」と思う内容が多かったのが印象です。
本書では本当に看護師さんにとって必要なこと、現場ですぐに役に立つ知識を書きました。お役に立てれば幸いです。
9)サンプルダウンロード
本書の一部をPDFファイルでダウンロードできます。ご購入の参考にしてみてください。
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