声音振盪が亢進/減弱する機序 ~肺炎、肺結核、強膜癒着、肺気腫、気胸、胸水、無気肺~

コウメイ(@kokusigokaku):読者の方から声音振盪について質問をいただきました。声音振盪の原理を知らない方、声音振盪が亢進/減弱する病気をただ丸暗記している方は必見です。

読者からの質問

声音振盪について質問です。気胸と肺気腫、胸水は声音振盪が減弱するのは理解できます。気体や水が溜まると音は吸収されるからと理解しています。だとすると、肺炎でも声音振盪は減弱しそうなのですが、亢進となっていました。なぜでしょうか?

 

声音振盪が亢進/減弱するものとして、以下のものが教科書や問題集にまとめられています。しかし、詳しい機序は載っていません。しょうがなく丸暗記している方が多いでしょう。

【声音振盪が亢進する疾患】

  • 肺炎
  • 肺結核
  • 強膜癒着

【声音振盪が減弱する疾患】

  • 気胸
  • 胸水
  • 無気肺
  • 肺気腫

しかし、丸暗記はつらく忘れやすいです。できるだけ合理的になるように機序を考えてみました。
※繰り返しになりますが教科書に機序は載っていないので私見になります。

声音振盪(振動) は固体と液体で伝わりやすく気体で伝わりにくい

そもそも声音振盪とは何かを考えてみましょう。声音振盪とは声帯の振動が胸壁に伝わったものです。もっと具体的に言えば、

声帯(個体) → 気管(固体+気体) → 気管支(固体+気体) → 肺胞(気体) → 肺胞上皮(固体) → 胸腔(液体) → 胸壁(固体)

と伝わってきた振動を手や聴診器で感じとったものです。

振動は固体 > 液体 > 気体の順で伝わりやすいです(固体が伝わりやすく気体が伝わりにくい)。
※意外かもしれませんが、線路をイメージすると納得できるでしょう。

声音振盪が亢進する疾患

ここまでの説明を元に声音振盪が亢進する疾患についてひとつずつ考えてみたいと思います。

【肺炎】
肺炎では肺胞中に液体や細胞成分が出てくるので、肺胞の中身が空気から液体や固体となります。液体や固体は気体より振動が伝わりやすいので声音振盪は亢進します。

【肺結核】
肺結核も肺炎と同じ機序と考えられます。

【胸膜癒着】
胸膜が癒着すると胸腔の部分がなくなるので、肺胞上皮(固体) → 胸腔(気体) → 胸壁(個体)の部分が肺胞上皮(固体) → 胸壁(固体)となるので声音振盪は亢進します。

声音振盪が減弱する疾患

次に声音振盪が減弱する疾患についてひとつずつ考えていきます。

【肺気腫】
肺気腫は肺胞上皮(固体)が少なくなり、肺胞(気体)が多くなった状態です。気体は固体より振動を伝えにくいので声音振盪は減弱します。肺炎や肺結核と逆ですね。

【気胸】
正常な状態では胸腔は少量の液体で満たされています。気胸ではそれが多量の空気に置き換わります。液体が気体に変わったので振動は減弱します。

ここでもう一つ大事な原則があります。

振動は距離が大きくなる程弱くなる

です。当たり前と言えば当たり前ですね。

気胸では胸腔(空気)の距離が大きくなるので振動が弱くなります。つまり、声音振盪は減弱します。

【胸水】
先程、正常な状態では胸腔は少量の液体で満たされていると説明しました。胸水はこの液体の量が多くなった状態です。よって、胸腔の距離が大きくなるので振動が弱くなります。つまり、声音振盪は減弱します。

【無気肺】
無気肺は少し複雑です。多くの教科書では声音振盪が減弱する疾患に分類されています。しかし、無気肺になった部分だけを考えると空気が減るので声音振盪はむしろ亢進しそうです。

癌による無気肺の場合は胸水が溜まっていることも多く声音振盪は減弱します(胸水が原因で無気肺になった可能性もあります)。

よって、無気肺で声音振盪がどうなるかは状況によると思います。おそらく医師国家試験では出題されないし、実臨床でも重要ではないので気にしすぎないのがよいかと思います。

学生の中には「小さな無気肺で声音振盪がどうなるか?」と心配されている方もいらっしゃいますが、より医師国家試験で出題されることはないし、実臨床で役に立つことはないので気にしないのがよいです。

小さな無気肺で声音振盪は亢進するのか? 〜臨床で役に立つことはない〜

2017.08.09