Quick Check(血液ガス)の使い方その5:症例5、6

今回で全て終了です。後2例確認していきましょう。

 

症例5 一見すると正常→AG開大代謝性アシドーシス+代謝性アルカローシス(ガス症例7)

57歳の男性。糖尿病性腎症があり今後透析の可能性について説明を受けている。直近のCre 5.5mg/dL。嘔吐、全身倦怠感で救急搬送。酸素投与はされていない。

pH 7.40、PaO2 75mmHg、PaCO2 38mmHg 、HCO3 24mEq/L、Na 148mEq/L、K 6.0mEq/L、Cl 100mEq/L、Lac 1.3mmol/L、Glu 140mg/dL. Alb 正常範囲.

 

1.アシデミアかアルカレミアか?

アシデミアもアルカレミアもなさそうです。

 

2.呼吸性か代謝性か?

今のところどちらもなさそうです。

 

3.代償は適切か?

今のところ代償を考える必要性はありません。

 

4.AGと補正HCO3

AGは毎回計算する必要があります。AG=148-100-24=24で開大しています。AGの開大があるときは必ずAG開大代謝性アシドーシスがあります。AGの開大があるので補正HCO3を求めます。補正HCO3=24+(24-12)=36であり、代謝性アルカローシスがあることが分かりました。

 

5.鑑別を考える

以上からAG開大代謝性アシドーシス+代謝性アルカローシスと診断できます。病歴、血液検査、画像検査とあわせて鑑別表から病気を特定していきます。今回は腎不全がAG開大代謝性アシドーシスの原因、嘔吐が代謝性アルカローシスの原因の可能性が高そうです。

 

症例6 代謝性アシドーシスと思ったら代謝性アルカローシス(救急症例①)

63歳の女性。倦怠感、食思不振で救急搬送。糖尿病の既往があるが通院は不定期。酸素マスク5L投与されている。

pH 7.29、PaO2 170mmHg、PaCO2 24mmHg 、HCO3 13mEq/L、Na 120mEq/L、K 5.0mEq/L、Cl 87mEq/L、Lac 3.3mmol/L、Glu 504mg/dL. Alb 1.5g/dL.

 

1.アシデミアかアルカレミアか?

pHが7.35以下なのでアシデミアです。

 

2.呼吸性か代謝性か?

HCO3の低下があり代謝性です。PaCO2は低下しており呼吸性ではなさそうです。

 

3.代償は適切か?

ΔHCO3=24-13=11なので、予想されるPaCO2の代償性変化は1.0〜1.3×11=11〜14.3(の低下)です。つまり、25.7〜29の範囲です。実際のPaCO2は24であり代償よりも低値です。よって、呼吸性アルカローシスも存在します。

 

4.AGと補正HCO3

AG=120-87-13=20でありAGの開大があります。AGの開大があるので補正HCO3を求めます。補正HCO3=13+(20-12)=21であり、代謝性アシドーシスと診断できます。以上からAG開大代謝性アシドーシスと呼吸性アルカローシス、AG正常代謝性アシドーシスと診断できます。

となりそうですが、今回は低アルブミン血症があるので補正AGを求める必要があります。

補正AG=20+2.5×(4-1.5)=26.25です。補正AGが開大しているので、補正HCO3を計算します。補正HCO3=13+(26.25-12)=27.25であり代謝性アルカローシスがあることが分かります。

 

5.鑑別を考える

よって、AG開大代謝性アシドーシス呼吸性アルカローシス代謝性アルカローシスが正しい診断になります。今回は糖尿病ケトアシドーシスが原因でAG開大代謝性アシドーシス、糖尿病ケトアシドーシスによる脱水で代謝性アルカローシスが考えられます。呼吸性アルカローシスの原因は敗血症かもしれません。糖尿病ケトアシドーシスの原因として敗血症があります。

 

以上で解説と練習問題は終わりです。これで使い方は大丈夫です。後はPDFをスマホやタブレットに入れて常に持ち運ぶようにしてください。