Quick Check(血液ガス)の使い方その2:酸塩基平衡の6つのステップ

次は酸塩基平衡について説明していきます。酸塩基平衡はやや難しく感じるかもしれませんが、それは覚えなくてよいものを覚えようとするからです。

学生のときは覚える能力が必要とされてきましたが、医師になってからはきちんと調べる能力が必要とされます。頑張って95のことを覚えるよりも、本やスマホで100のことを確認した方がよいです。覚える必要はありません。PDFを見ながらできればOKです。

 

酸塩基平衡を解釈する6つのステップ

酸塩基平衡は6つのステップからなります。

 

ステップ1:アシデミアかアルカレミアか?

pH < 7.35ならアシデミア、pH > 7.45ならアルカレミアです。アシドーシス、アルカローシスという表現ではないので注意してください。pHで判断するのはアシデミアかアルカレミアかです。

 

ステップ2: 呼吸性か代謝性か?

ステップ1で異常があった場合、その原因が呼吸性か代謝性かを判断します。

アシデミアの場合、HCO3が低下していれば代謝性、pCO2が上昇していれば呼吸性です。アルカレミアの場合、HCO3が増加していれば代謝性、pCO2が低下していれば呼吸性です。

 

ステップ3:代償は適切か?

アシドーシスかアルカローシスがあった場合、その影響を小さくするようなこと(代償)が起こります。例えば代謝性アシドーシスがあった場合そのままではpHが低下してしまいます。それを防ぐために呼吸数を増やしPaCO2を低下させます。この代償ですが大事なことが3つあります。

①代償の値は決まっている
代償の値は人によってバラバラではなく皆同じ値です。

②代償し過ぎることはない
代償はあくまで代償です。代償し過ぎるということは起こりません。例えば代謝性アシドーシスによるアシデミアがあったとします。代償として呼吸数が増え、PaCO2が低下しpHがややアルカレミアに傾いたとします。しかし、代償が原因でpHが7.50など完全なアルカレミアになることはありません。

③代償には限界がある
代償には限界があります。例えば、先程の例ですが、PaCO2が低下したとしても正常値の40mmHgから5mmHgになるようなことはありません。

代償の値と代償の限界をまとめたのが以下の表になります。代償の限界

この表の丸暗記が血液ガスの評価を難しくしている原因ですので、丸暗記する必要はありません

詳しい使い方は今後例題を見ながら説明しますので、今は簡単に説明します。例えば、HCO3 30mEq/Lの代謝性アシドーシスがあったとします。その場合、PaCO2が代償として低下します。どれだけPaCO2が低下するかというと、1.0〜1.3×ΔHCO3です。

ΔHCO3とはHCO3の正常値と測定値との差です。HCO3は22〜26mEq/Lが正常範囲ですが、ΔHCO3を求めるときは24mEq/Lを正常値とします。今回はHCO3 30mEq/LですのでΔHCO3は30-24=6mEq/Lです。

よって、1.0〜1.3×6=6〜7.8mmHgの範囲でPaCO2が低下すると予想されます。

 

4 代償以外の異常はあるか?

PaCO2の正常値は35〜45mmHgですが、代償を考えるときは40mmHgを正常値とします。PaCO2は32.2〜34mmHgの範囲にあるはずです。

もしPaCO2が25mmHgなど先程の予想より低ければ、代償以外に呼吸性アシドーシスも存在します。逆にPaCO2が40mmHgなど先程の予想より高ければ代償以外に呼吸性アルカローシスも存在します。

 

5 アニオンギャップ(AG)を計算する

次にアニオンギャップ(AG)を計算します。AG=Na-Cl-HCO3で正常値は10〜14mEq/Lです。代謝性アシドーシスがあった場合、AGを計算することでさらに病気を鑑別することができます。代謝性アシドーシスがあるときAGを計算することは必須です。

しかし、pHやHCO3が一見正常に見えてもAGを計算すると開大している場合があります。よって、どんな場合でもAGを計算する必要があります。アルブミンが4g/dL以下の場合は補正が必要です。補正AG=測定AG+2.5×(4-アルブミン)となります。

この補正AGの求め方も酸塩基平衡を難しくする要因のひとつです。式は覚える必要はありません。とにかく、どんな場合にもAGの計算が必要とだけ覚え、あとはPDFを見れば大丈夫です。

6 補正HCO3を計算する

もしAGが開大していた場合、HCO3の補正が必要です。補正HCO3=測定HCO3+ΔAGです。ΔAG=AG-12です。アルブミンが4以下で補正AGを求めた場合は補正AGからΔAGを計算します。

以上で6つのステップは終わりです。

  • AG正常代謝性アシドーシス
  • AG開大代謝性アシドーシス
  • 代謝性アルカローシス
  • 呼吸性アシドーシス
  • 呼吸性アルカローシス

のどれか、もしくは複数の組み合わせが鑑別に挙がったと思います。PDFの鑑別表を見ながら、どの病気が患者に当てはまるか病歴や他の検査と併せて判断してください。

鑑別表の丸暗記が酸塩基平衡を難しくする最大の要因ですので丸暗記はしなくて結構です。必要なときにPDFで確認してください。次回からは実際の症例を通して練習していきます。