3-3 発作性上室頻拍の心電図【ブログ版 これだけ心電図】

※本記事は連載「これだけ心電図」の一部です。こちらが目次へのリンクになりますので一番初めから読むことをお勧めします。

コウメイ:今回は発作性上室頻拍について説明していきます。いつも通りまずは病態から見ていきましょう。

目次

1)発作性上室頻拍の病態

発作性上室頻拍で重要なのが副伝導路です。副伝導路にはいくつかあるのですが、有名なのがKent束です。副伝導路=Kent束と考えていただいて構いません。

この副伝導路ですが「伝導路」と名前がついているだけあって命令を伝える機能があります。「副」とは「主」ではないという意味であり、伝導路の「主」とは刺激伝導系になります。つまり、副伝導路とは刺激伝導路以外に命令を伝えるものになります。

さて、この副伝導路ですがどこにあるのでしょうか?副伝導路は心房と心室との間にあります。

Kent束(ケント束)のイラスト
図:拙著『これだけ心電図』(日本医事新報社刊)より改変

「だから何?」って感じですよね。それではここに副伝導路が存在するとどのようなことが起こるか考えてみましょう。

2)副伝導路(Kent束)があるとどうなる?

副伝導路について考える前に正常な命令の流れについて復習しましょう。正常では洞結節から命令が出て、

心房⇒房室結節⇒ヒス束⇒右脚・左脚⇒プルキンエ線維⇒心室

と伝わります。そして、心室に伝わった命令はなくなります

正常では心房と心室の間には絶縁体があり、電気を通しません。房室結節のみが唯一の電気の通り道となります。その結果、心室に伝わった命令は行き場が無くなり消えるのです。

しかし、副伝導路が存在すると心室に伝わった命令が、副伝導路を通り心房へと伝わってしまいます。

発作性上室頻拍のイラスト_これだけ心電図
図:拙著『これだけ心電図』(日本医事新報社刊)より改変

その結果、命令がクルクル回り頻拍となってしまいます。

発作性上室頻拍の病態

細かい話をすると、普段はクルクル回った状態ではないのですが、あるきっかけでクルクル回るようになり、しばらく(数時間)すると自然と正常に戻ります。よって、「発作性」という名前がついています。
※「あるきっかけ」を理解しようとするとちょっと難しいので、とりあえずは上記を理解しておけば大丈夫です。

3)発作性上室頻拍の心電図

以上の病態からどのような心電図になるか考えてみましょう。まず、心房と心室が収縮しますので、P波、QRS波が見られます。ただ、ペースが早いのでP波とQRS波が重なり、P波がどこにあるか分からなくなることが多々あります。結局、QRS波のみが見られることになります。

このQRS波ですが、心室への命令は刺激伝導系を通ってきますので、QRS幅は狭くなります。

※「狭い=正常」です。

また、副伝導路を通った命令は一定のペースでクルクル回っているので、QRS波も一定のペースで見られます。RR間隔が一定と表現することもできます。よって下のような心電図になります。

発作際上室頻拍の心電図
  • P波はあまり見られない
  • QRS幅は狭い
  • RR間隔は一定

以上が特徴ですが、丸暗記するのではなく、病態から自分で考えられるようになることが大切です。もっと詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。

今回で頻拍を来す心電図は終わりです。次回からは徐脈を来す病気について説明していきます。まずは「房室ブロックとは何か?」です。

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